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臣side
「…え?」
突然の言葉に驚いて彼女を凝視すると、彼女はそっと視線を窓の外へと向けた。
…え…?
…空耳じゃないよな?
「…あの……。」
戸惑ったような俺の声に、彼女は外を見つめたまま独り言のように言った。
「…大丈夫です。病院までは私が責任持ってお連れしますが、その後は別のスタッフさんにお願いしますね。」
「…え?…あの…。」
何て言えばいいのか、実際、彼女といると気まずいのは事実だけれど、まっすぐ帰らずに病院まで付き合わせているのにそれはあまりにも失礼な話で…
言葉を探して困っていると…
「……素直な方ですね。全部表情に出てますよ?」
いつの間にかこっちを向いていた彼女がそう言って…
ふっと笑った。
「あ。」
「え?」
「笑った。」
「あ…。」
明らかにまずったと言う顔をした彼女に俺も思わず笑みがこぼれる。
「…そうやって笑ってくれたら、俺も苦手意識なくなるんですけど?」
からかうようにそう言うと、彼女は、顔を隠すようにまた窓の方を見て…
「こちらにも色々事情があるもので…。」
そう言うと、またいつもの難しい顔に戻って…
「…着きましたよ。少しお待ちください。」
そう言って先に車から降りると、夜間入り口から病院に入った彼女は車椅子を押しながら戻って来た。
「いやいや、大げさですって!」
「少しでも早く治したいなら、大人しく乗ってください。」
…美人に凄まれると、人間は素直に言うことを聞くのだと学んだ俺。
彼女に押されながら着いた診察室前の廊下でしばらく待って…
呼ばれて中に入り…
…その後はレントゲンを撮って、また診察室へ。
その間、俺たちに会話らしい会話はなく…
レントゲン写真を眺めたドクターに
「骨折はしていません。いわゆる捻挫というものですね。」
そう言われた瞬間…
「「はぁー、良かった。」」
2人のため息が重なった。
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瑞穂(プロフ) - 久しぶりに、来てみたら、大好きなまるさんの作品に鍵がかかっていて、読めず残念です。どの作品も、大好きです。君想うは、鍵がかかっていなかったので、久しぶり読ませて頂きました!やはり素晴らしいです。また、読みに来ます! (2020年8月6日 1時) (レス) id: 800035175b (このIDを非表示/違反報告)
薫(プロフ) - ◎まる◎さん» 私は長編で描写を細かく書いたり話に深みを出せる作者様が羨ましいです♪嬉しいってお言葉ありがとうございます!お互い頑張りましょう(*´ω`*) (2019年5月20日 15時) (レス) id: 8892e5e17b (このIDを非表示/違反報告)
◎まる◎(プロフ) - 薫さん» 私は短編できちんと話を完結できる書き手さんが羨ましいですー(≧∀≦)!作品拝見してドキドキしてますー(//∇//)今は長編執筆中なんですね!頑張って下さいね(^-^) (2019年5月19日 21時) (レス) id: da4fc601b2 (このIDを非表示/違反報告)
薫(プロフ) - ◎まる◎さん» 返信ありがとうございます!本当に面白いです。長いお話をかけるのも凄いなと思います!表現力ありありですよ!作者様の優しい気持ちになれる表現好きです。読んでくださるんですが!?拙すぎて恥ずかしいです(笑)更新頑張ってください! (2019年5月19日 20時) (レス) id: 8892e5e17b (このIDを非表示/違反報告)
◎まる◎(プロフ) - _noさん» おはようございます(≧∀≦)一気読み…すごい!長い話だから大変でしたよね(>_<)書くたびに話が長くなっていく…。今後も頑張るのでよろしくお願いします! (2019年5月19日 4時) (レス) id: da4fc601b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎まる◎ | 作成日時:2019年3月9日 13時