sweeper 10

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隆二side






「久しぶりに会った挨拶がそれ？」


ウンザリしたように臣は掴んでいた俺の胸ぐらを離すとどかっと椅子に腰を下ろした。




「……別に挨拶に来たわけじゃない。騒ぎ声が聞こえたからたまたま覗いてみただけ。そしたら、ガキの喧嘩だった。日本まで来て、こんなくだらないもの見ると思わなかったからガッカリ。」

咲苺は軽蔑したように辛辣にそう言うと、“じゃあ。”そう言って、部屋から出ようとして…思い出したように背中を向けたまま話し始めた。






「…A様、この半年間、仕事と久遠の看病で無理して何回も倒れた。」









項垂れていた臣が驚いたように顔を上げた。









「…だから……“休める時は寝て下さい”ってお願いしたのに……どんなに疲れてても、絶対に寝ない日があって……。






…その日がどんな日だったか、今のあんたには理解できないだろうけど…。」








そう言って、咲苺は振り返って臣を真っ直ぐに見つめた。







「…月が見える日は、ずっと空を見上げてた。どんなに眠るように言っても“今しか会えないんだよ。”って。まるで、月に見立てた誰かに会ってるみたいに、月が綺麗に見える夜は本当に嬉しそうだった。」









「……臣………。」









俺が声をかけるのと同時に…









ツーっと臣の頬を涙が流れた。









「…会わなくて良いんですか？って聞いたら“自分から……自分の勝手で手放したのに、また自分の勝手で会いになんて行けないよ。”って言ってた。……まぁ、そう思うのが普通だよね。





…




…登坂、あんたさ、A様が恋愛感情で久遠の所に行ったと思ってるの？





…これがあんただったらどうしてた？






…確かに、A様は以前、久遠のことを愛してた。






…でも……今A様が愛してるのは誰？







…最後にA様……自分が死ぬかもしれないって時に、あんたに何て言った？」







涙を流しながら咲苺を見つめた臣に、咲苺は優しく微笑んだ。


「…A様、書類の整理終わったみたい。これから帰るって。」

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