372 ページ22
「…A?……A!!」
地べたに座り込んでいる私に向かって、久遠が駆け寄ってくる。
「何してるんだよ?」
視線を合わせるようにしゃがみ込んだ久遠は、私を胸の中へと引き寄せて、ポンポンと子供をあやすように頭を撫でた。
泣き止まない私に、久遠は優しい声で話かけてくる。
「…ほら?泣きやめって。退院パーティーしてくれてるんだろ?主役が抜けてどうするの?」
…
「…んー……困ったな。…どうしたら泣き止むかな…。飴?ガム?お人形?」
「…何それ…子供じゃん!」
吹き出して、顔を上げると、そこには優しい顔の久遠。
「…でも、効果あったよな?泣き止んだ。」
「……久遠……私…朝…酷いこと言って…」
「…ごめんな。」
「…え?」
謝ろうとしたのに逆に謝られて驚いて彼の顔を見つめると、ふっと笑った彼は…
「俺が大人気なかった。お前はいつまでも俺らといるもんだって思ってて…、ちょっと妬いちゃったな。……お互い、もういい歳なのにな。」
…久遠…
「…私は……私はいつでも久遠達といるよ?…久遠もでしょう?」
私の問いかけに、久遠はそっと視線を逸らして立ち上がると、私の手を引いた。
「…立てるか?」
…
「…久遠、どうして?…目を覚ましてからずっと、久遠は私達から距離を取ろうとしてる。それって…私が忘れてることに関係あるの?…皆が幸せなら…私が忘れたままの方が皆が幸せなら…私、思い出さなくて良いって思ってた。…だけど…!だけど!久遠が…思い出した方が久遠が皆と一緒にいれるなら……私、思い出すから!頑張って思い出すから!!」
立ち上がって、久遠に縋り付いた時…
苦しげな表情になった久遠は、私の両肩を掴んで引き離すと、目を見つめて言った。
「……俺には…お前にそこまで言ってもらう資格はない……。」
「……………久遠?」
何を…何を隠してるの?
私の問いかけに、ハッとした顔の久遠は
「…考えすぎだよ。何も変わっちゃいない。しばらく皆と離れて仕事していたから照れ臭いだけだ。ほら、おぶってやるから帰るぞ。遅いと皆、心配するぞ。」
「…久遠、でも!」
「話は終わり。ほら、乗っかれ。」
そう言うと、久遠は私に背中を向けてしゃがんだ。
…
…ねぇ、皆…
この時、何としてでも聞き出していたら…
私たちの未来は変わってた?
360人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
◎まる◎(プロフ) - 花さん» こちらこそ、いつもありがとうございますo(^_^)oまさしく!ちょっと(かなり)独特な世界観の私のお話を読んでくださり、こちらこそ感謝感謝です。今後もよろしくお願いします! (2019年1月8日 4時) (レス) id: 1dba7527db (このIDを非表示/違反報告)
◎まる◎(プロフ) - atokさん» 怒涛の更新、嫌がられてなくて良かったー!では、最終回へ向けてまだまだお付き合い下さい! (2019年1月8日 4時) (レス) id: 1dba7527db (このIDを非表示/違反報告)
◎まる◎(プロフ) - あやさん» ズラーッと(笑)!とっても面白い表現頂きありがとうございます!そして、この作品と出会って頂きありがとうございます!引き続きよろしくお願いしますね! (2019年1月8日 4時) (レス) id: 1dba7527db (このIDを非表示/違反報告)
◎まる◎(プロフ) - nonさん» コメント(問いかけへのお返事)ありがとうございます!ではでは、怒涛の更新行っちゃいますよー!笑 (2019年1月8日 4時) (レス) id: 1dba7527db (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - いつも面白くドキドキするようなお話ありがとうございます!他には無いような意外な設定とかで読めることが嬉しいです!笑 これからも応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: bd82456b94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:◎まる◎ | 作成日時:2018年12月31日 7時