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優雨side
「…変な奴…」
それが、その女の子への最初の印象だった。
その子が孤児院に入って来た日、
俺は玄関先でぶつかりそうになって…
「…あ……ごめん。」
こっちは謝ったのに…
無言でこっちをじっと見た後、会釈をされて終わったから。
…
その数時間後、孤児院の理事長がその子を連れて来て紹介した時に「喋れない」ってことが分かって…
あぁ、だからあの時返事しなかったんだ。
彼女が喋れないことに対してはその程度の感覚だった。
彼女が来てからは…
理事長と孤児院の他の奴らのターゲットは彼女になって…
正直、面倒なことに巻き込まれたくない俺達は
たまに行ける学校の彼女のカバンにゴミが入れられていたり…
机の中に虫の死骸が入れられていたり…
時々目に入るそんな光景は見て見ぬ振りをしていた。
正義感とか…
親切とか…
優しさとかは…
とうに、現実にはないものだって思ってたから。
ある日…
昼食の時間…
いじめっ子達が、彼女のテーブルを取り囲んで…
スープの中に、パンやサラダや牛乳…小さなベーコン…出ていた全ての食材を突っ込んでぐちゃぐちゃに混ぜた。
日に一度の食事しか与えられていない俺達には…
それがどんなに酷いことなのか分かっていて…
流石に…
いつも無表情な彼女が泣き出すんじゃないかと…
…息を飲んで見ていた時だった。
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作者名:◎まる◎ | 作成日時:2018年10月23日 20時