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岩side
パーティーが始まっても、主役は臣さんとA。
次から次へと2人のところにスポンサーがやって来ては
『交際宣言で好感度上げるなんてなかなかないよ!』
『天下の色男もこれで年貢の納め時か?』
なんて、ガハガハ笑いながら上機嫌に絡んでて…
臣さんもAさんも百点満点の演技力で対応…
ようやく人の波がひと段落した時だった…
『琴様っ!!』
5歳位の小さな女の子が、彼女に駆け寄って抱きついた。
その背後からは『待って!リイ!』と母親らしい女性が青い顔をして追いかけてくる。
抱きつかれたAさんは一瞬驚いた後、リイと呼ばれる女の子に目線を合わせるようにしゃがんで、愛おしそうにぎゅっと抱きしめた。
「リイ…元気だった?」
彼女の優しい表情はこれまでにも見て来たけれど…
今見せているこの表情は表現することが出来ない位…
穏やかで…
愛情に満ち溢れていた。
「うん!元気だった!リイ、琴様との約束守ってママの言うことちゃんと聞いたよ?」
嬉しそうに一生懸命話すリイに追いついた母親は
「たった今、言うこと聞いていないじゃない。…すみません…どうしてもお礼が言いたくて…蓮温さんに頼んでここにお邪魔しました。」
そう言うと、Aさんに向かって深々と頭を下げた。
少し離れた場所で警護していた蓮温、優雨、笑苺が近づいてくるとAさんは「少し上の部屋で話しをしてくるから。」そう言って、母娘と一緒に楽しそうに会場から出て行く。
「…どういう関係…?」
思わず俺が呟いたのは…
リイと呼ばれた女の子は可愛いワンピースを着ていたけれど…
母親の格好が…
パーティーに参加するとは思えない…
古びたスーツ姿だったから…
答えなんて返ってくるはずがないと思っていたのに…
…
…蓮温が答えた。
「新聞を見たでしょう?先日逮捕された会長の被害者ですよ、あの親娘は。」
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作者名:◎まる◎ | 作成日時:2018年9月27日 12時