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「あー…もう…泣くな。」
零れ落ちそうな涙を落とすまいと上を見上げる。
「…あんな怒ってる隆二、初めて見たなぁ…。」
鼻を啜って、さっと目元を手で拭き取って…
「…無事で良かった…。」
車が突っ込んだ時の光景を思い出した瞬間…
もう我慢できなくなった涙は、頰をポロポロと伝った。
…
…
『うわっ！最悪！』
そんな私の耳に入ってきた男の人の声。
声がした前方を見ると…
男の人が街路樹を見上げていて…
私の視線も自然とそこへ向かう。
視線の先には、木の枝に引っかかった風船が１つ。
『…怒られる。持って帰るって約束したのに…』
スーツを着たサラリーマン風の人は、ジャンプを数回したけれど…
全然届いてなくて…
そのうち、何とか木によじ登ろうとし始めたけど…
あれは無理だ…
思わず、笑みがこぼれた私。
「手伝いましょうか？」
声をかけると、驚いたように振り向いて…
照れたように「恥ずかしいとこ見られちゃったな…。娘に持って帰るって言っちゃったんですよ。でも、お嬢さんに手伝ってもらってまで…諦めます。」
そう言って、地面置いていたカバンを手にする男性。
「娘さん？それなら、尚更…持って帰らないと。私、得意なんです、木登り。」
「え？」
男性の困惑する声を背に、少し高めのところにある1番下の枝に足を引っ掛けて…
風船の紐を掴んで飛び降りた。
「どうぞ？」
振り向いて…
…再び男性に向き合った私の目に映ったのは…
にたぁと笑った男の顔と…
手に持つ…
スタンガン…
瞬間…
バチバチッ
音と一緒に…
首に激痛が走った。
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作者名：まる
| 作成日時：2018年8月12日 6時
