二度目のさよなら ページ23
彼を、俺の力じゃ救えないのなら。
彼が好きなもの、大切にしている人たち、愛している場所を守れたら。
存在が消えてなくなってもいい。
豪奢な廊下を、確かな魔力を辿って歩く。
気付けばテラは仔竜の姿で俺のそばを飛んでいた。
胸の中を、どす黒い霧のような感情が巡る。
それを察したのか、傍に寄るテラが顔を顰めた。
「A、控えろ、よくない感情だ」
『悪魔が人の身を案じるんだね』
テラの金色の瞳が真意を探るように見つめてくる。
「…A、もう、決めたのか」
横目でテラを見て、また視線を前に戻せば頭のいいこの悪魔はため息をついた。
「…わかった、付き合ってやるよ」
『……ありがとう』
ーーーーーーーー
静かに開かれた扉に顔を上げる。
そこには、いつの間にかはぐれていたAの姿があった。
「A！いままでどこに……A…？」
「…っ！」
「待っていましたよ、A」
Aは腕を首の後ろにまわし、出かける前にハウルからもらったネックレスを外す。
そばに居たハウルが身じろぐ気配がする。
なに、なにが起ころうとしているの。
ハウル、どうして何も言わないの。
A、どうして。
そんなに、悲しい目をしているのーー？
ーーーーーーーー
ネックレスを外し、こちらを見るサリマン先生と目を合わせる。
不思議と、恐れはなかった。
『もう、あなたの好きにはさせない』
「…逃がしませんよ」
言葉とともに、強力な魔法が部屋を包む。
怯えるソフィーの肩を抱くハウルは、それでも躊躇いを見せた。
その視線は、俺を見ていて。
『行って！ソフィーたちを連れて、はやく！！』
「っ！」
ネックレスを手のひらでつつみ、親指の隙間から吐息をかける。
途端、迫り来る大波を風が裂き、渦を巻いた。
炎が波の中から突き抜けて、この体を包み込む。
ーーーーーーーー
波の渦から炎の柱が突き抜ける。
そこから現れたのは、美しい紅蓮の竜だった。
私はなぜか、その竜が、Aだと確信していた。
「っ駄目よハウル！Aがまだいるのに！！」
「ここを出るには、Aが時間を稼いでくれてる今しかない！」
「でも！……っ」
ああ、そうよね、ハウル。
あなたが１番、Aを助けに行きたいはずよね。
「…そうね、はやく追手を振り切って、お城に帰らなきゃ」
「……ソフィー、」
「私がお城の方はなんとかする、あなたはAのこと、頼んだからね！」
「…ああ！」
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和月(プロフ) - これは此処で終わりなんでしょうか…?続編がとても気になります、 (2020年8月13日 19時) (
レス) id: 0d16dd6f4f (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - とても面白いです！更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2018年9月27日 13時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
十(プロフ) - 瀬那さん» あわわわありがとうございますー！ 更新がままならない状況ですが、糧にして頑張ります…！ (2018年8月14日 2時) (レス) id: 1639f65614 (このIDを非表示/違反報告)
瀬那(プロフ) - 主人公くんがかっこよすぎます！続き楽しみにしてます！ (2018年8月12日 2時) (レス) id: 636bee5223 (このIDを非表示/違反報告)
十(プロフ) - sinoさん» 更新がままならず、読んでくださっているのに申し訳ないです…！感想をいただけるのがなにより嬉しいです、ありがとうございます！！ (2018年4月16日 19時) (レス) id: 36a846a355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十 | 作成日時：2015年10月4日 22時
