眠そうな吐息 ＊K.m＊ ページ17
思い切ってベットに入って、わたしの枕の上に置かれた左手をそっと動かすと彼の焦点の合わない目がわたしを捉える。
「ごめんね」
『怒ってないって』
「今度はちゃんと連絡する」
『ん、』
「心配してくれてありがとう」
自由なのに、どうしようもなく自由なのに人の気持ちには驚くほど敏感なのは何でだろう、すごく素直なのに言葉にするのは不器用なのはなぜ？
健くんの頭に手を伸ばして地肌を柔らかく揉むと気持ちよさそうに目を閉じた。そのままぎゅっと彼の頭を首元へ抱き寄せると鼻にあたる髪を感じる。一つ息を吸うと、健くんの吐息も首筋にかかった。ぬるい健くんの体温もシャンプーの匂いも好き。
「くんくんするのやめてよ」
『なんで？いいじゃん』
「恥ずかしいしくすぐったい」
『Aの匂い』
曇ったような声から眠気が伝わってくる。幸せな時間をずっと掴んでおけたらいいのに。時間はずっと流れていくし、わたしの手のひらに握られてるわけにもいかない。今日、こうやってわたしがあなたを見つめている時に、嫌なことがあって泣いている人もいるだろう。時間は誰に対しても平等だ。
『明日休み？』
「うん、休み」
『朝、一緒にスタバ行こう』
「んふふ、ワッフル半分して」
『俺いらなーい』
「知ってるー」
すりすり身体ごと寄ってきた健くんはわたしの脚の間に自分の脚をぐいぐい滑り込ませてくる。骨と筋肉が硬いけどあったかい。
『おやすみ、A』
「おやすみ」
なんでなのか、彼を一人にしたくないと思った。健くんはなんだかんだ言われながら一人で何でもできるし、誰かに依存したり干渉したりはしない。だからこそ、一人で何でもしちゃうから一人は寂しい。一人にしたくはないなんて、わたしが勝手につけた一緒にいるための理由かもしれない。でも、二人でおはようと起きて、おやすみと眠りにつけたら、きっと一人でいるより幸せだろう。一人にはしないから、わたしも一人にしないでほしい。そう思いながら彼の首に巻きつく自分の腕に込める力を強めてしまった。
彼の鼻から軽い息が漏れて身じろぐ。
ごめんね、どうしようもなく好きなの。
心臓までもを抱擁して
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しずく(プロフ) - Jうさぎさん» こんにちは。コメントありがとうございます。思考回路が単純なので褒めていただいたことが嬉しくて屋根壊すくらい飛び上がりそうです。大変な毎日にちょっとのきゅんきゅんは必要ですよね！わたしの妄想がみなさんのお役に立てば嬉しいです。また読みに来てください！ (2016年7月26日 15時) (
レス) id: 26c8642a63 (このIDを非表示/違反報告)
Jうさぎ - こんばんは。いつも楽しく拝見させて頂いてます。しずくさんの書くお話は、独創性と言葉の操り方がほんとにすごくて、内容を楽しみキュンキュンしながらはもちろん、その表現力のすごさに驚きながら読んでいます。ほんとにこのシリーズが大好きです！ (2016年7月25日 20時) (レス) id: 62cbef7481 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - ななとっぽさん» こんばんは。感想嬉しいです。ありがとうございます！大人の包容力といいますか、不器用なところも含めて彼女が好きだよ、っていう坂本さんの裏設定があったりします。また読みに来てください！ (2016年5月1日 23時) (レス) id: 26c8642a63 (このIDを非表示/違反報告)
ななとっぽ(プロフ) - あわわわわ坂本さん読ませて頂きました！とっても素敵で綺麗なお話･･･うっとりほっこり（笑）季節の変化を恋人と分かち合えるのって幸せですよねふふっ！しかもそれが坂本さんなら尚更です！とっても素敵なお話ありがとうございました (2016年5月1日 20時) (レス) id: 6008096526 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - ななとっぽさん» どうか体に気をつけて、心から笑える日までわたしはここで、微力ながらできる限りのエールを送ります。どうぞまた読みに来てください。待ってます。長文失礼しました。 (2016年4月19日 19時) (レス) id: 26c8642a63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しずく | 作成日時：2016年2月20日 22時
