ふたり

10 You ページ10

ここでの生活にも慣れてきた頃、


深夜にたまたま目が覚めて
どうしても喉が乾いてしまった私は、

私に気を遣ってリビングのソファーで寝てくれてる北斗さんを起こさないよう、
できるだけ静かにキッチンへ向かったんだけど…





北「…っ、……く、」





北斗さんがひどく魘されてた。

汗もすごいし、このままにしておけなくて





『北斗さん？北斗さん、しっかりして？』

北「っ、A…！」





肩を揺すって起こすと、
目を覚ましてバッ、と起き上がった北斗さんにそのまま抱きつかれた。





『わっ、』





びっくりしたけど、大丈夫。

初めて会ったときみたいに怖くない。



背中に手を回してぽんぽん撫でると、
北斗さんは何かに気付いたみたいに力を緩めた。





北「ご、め…っ、」





北斗さんって大きい。

だけど今は、どこか壊れてしまいそうで…



力を緩めた北斗さんの代わりに、ぎゅっと抱き締めた。





北「っ、ごめ…A、A…」





私の名前をたくさん呼んで、

子供みたいに泣きじゃくる北斗さんに
堪らなく胸が苦しかった。



呼び返すことはできなかった。


北斗さんが求めているのは
彼を愛していたあの頃の私で、

今の私が声を出したら、それだけで北斗さんを傷付ける。



北斗さんはあの日までの私をこんなに愛してくれてた。

私のせいで北斗さんはこんなに苦しんでる。



それがつらくて、許せなくて、
ばれないように声をころして私も泣いた。




忘れてしまった方はずるい。


何もかも勝手に忘れて、
覚えている方のつらさをわかってあげられないんだから。



一晩中、北斗さんを抱き締めて頭を撫で続けた。







朝が来て、辺りが明るくなると
お互いの真っ赤な目が見えちゃって、

なんとなく気まずくなって二人とも苦笑いした。





北「この顔じゃ会社行けない。」





そう言う北斗さんとソファーに並んで、
昼までずっと二人で目を冷やしてた。

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