その花の名は (ページ7)

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あれからまた何日か過ぎた。相変わらず俺は、Aさんと必要最低限のやり取りしかできないままだ。

でも気付いたこともある。やっぱり俺は、Aさんを初めて見たときから、Aさんに恋をしているんだって。一目惚れなんて信じてないとかいう理由をつけて誤魔化してきたけど、あの時から俺は間違いなくAさんに惹かれていたんだ。残念なことに、それを確信したところでどう行動したらいいのか全く分からず、今に至る訳だけれど。

だから今日も、寝る前に布団の中で、都内のデートコースを調べる為にスマホと睨めっこをしていた。水族館とか美術館とか、静かでゆっくりできる所がいいかな。あとは、お洒落なカフェで美味しいケーキでも食べるとか。Aさんとなら、どこだって楽しいんだろうな。

なんて考えてる時だった、画面上に通知が現れたのは。

AA遅い時間にごめんね、聞きたいことがあるんだけど

思わずスマホを落としそうになった。すぐに既読をつけたら気味悪がられるかな、と思いながらも"聞きたいこと"が気になって、トーク画面を開く。緊急事態かと思ったことにしよう、なんて要らない言い訳を自分に向けながら。

乾大丈夫です。何ですか?

返事はすぐに来た。

AAこの前、私と須貝さんが飲んでるとき来てたんだよね?私寝ちゃってて覚えてないんだけど、乾くんに何か失礼なことしなかったかなって思って

失礼なこと？

全く心当たりがなかった。なんでAさんがこんなことを言ってくるのかも分からない。

乾何もしてないですよ

AAじゃあなんで

AAあれから私のこと避けてるの?

え？

ちょっと待って。俺が、Aさんを、避けてる？

乾避けてませんよ

AA嘘

AAだって目合わせてくれなくなったもん

え、いや、それは。

AA私、何か乾くんに嫌われるようなことしちゃったんでしょ

AA正直に教えてほしい

ここで俺はやっと、自分の馬鹿さに気が付いた。違うのに。Aさんのことを意識しすぎてしまってただけなのに。でもそれって、どう考えても避けてるようにしか見えないじゃん。

撤回しなきゃ。ちゃんと伝えなきゃ。

そう思ったら、俺はAさんに電話を掛けていた。