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Aは相変わらずふらふらしながら、少し正気を取り戻した顔で帰ってきた。
「吐いた？」
「吐かない。でもスッキリした」
「よかった」
「次、りんごサワー飲む」
「お水飲みながら飲むって約束するならいいよ」
「そうする」
「よし、えらい」
Aのりんごサワーと水、自分のハイボールを頼んで、先程起こったことをAに伝えることにした。
「乾来るってよ」
「ぶっ…！？」
Aは口に入れたばかりの枝豆を吹きそうになった。
「なんでそんなことになってるんですか！？」
「さっき連絡きて、Aと飲んでるから来れば？って言ったら来るって」
「なにそれ！」
そのとき、タイミングよく飲み物が運ばれてきた。
「もう！飲まなきゃやってられない！」
「それ、今日2度目だな」
乾はものの15分で現れた。オフィスの近くで飲んでたから、すぐ片付けてくればそんなものだろう。しかし問題はAだった。この短い間にまた酔いが回って、今度は机に突っ伏して寝てしまっていた。
「え、Aさん寝てるんすか」
「寝てる。2人で飲んでて2杯目飲みながら寝るって、訳分からんよな」
「ですね」
乾は俺の横に座った。
「Aさーん、乾来たよー」
声を掛けながら肩を軽く叩くと、Aはガバッと顔を上げた。そして、俺の顔を見た後、乾の方に視線を向けた。
「あー、乾くんだー」
Aの笑い方は、ふにゃり、という効果音がぴったりだと思った。いつもは割とクールな印象で、それは少しアルコールを摂取したところでさほど変わりない筈だった、のに。なんだこの有様は。そんでまた寝るし。
はは、と苦笑が漏れる。
「さっきからこんなかんじよ。酔いすぎでしょ？笑っちゃう…」
俺はそこで、言葉に詰まった。理由は明確に1つだ。横を向いたら、乾が目を見開いて、信じられないくらい真っ赤な顔をしていたから。え、乾ってこんな顔する？
「乾、もしかしてなんだけど、」
連絡してきたときから、ずっと違和感はあった。今何してるかなんて、今まで乾が聞いてきたことがあっただろうか。そういえば今日、オフィスを出るときから、俺はAと一緒だった。それを見てたんじゃないのか？それを見て、乾は何を思った？
「違ったら悪いけど、」
まさか。
「Aのこと好きだったりする？」
乾の顔がまた一段と赤くなったのが、答えだった。
end.
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作者名：猫舌 | 作成日時：2022年8月18日 14時
