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side:ini
最近ちょっと仕事が立て込んでいる。休憩取ってる暇があったらパソコンに向かってるような状態が続いてるし、酷ければ夕方まで昼食にありつけない日だってある。だから今日は13時を回ったところで昼休憩が取れるってなって、むしろありがたいとさえ思った。あいにく今朝は少し寝坊してしまったから何か買ってくる時間がなくて、ちょうどいいし気分転換がてらコンビニにでも行こうってオフィスを出ようとした、そのときだった。
Aさんが前から歩いてきて、ランチしに出てたんだなあって思った瞬間、隣りに山本さんの姿が見えた。
なんで山本さんもいるんだよ。
…まさか、2人で食べてきたとか？
「あ、乾」
山本さんが立ち止まったのに合わせて、俺とAさんの足も止まる。Aさんの方を見れば、気まずそうに目を逸らされた。え、なんで？
「乾、どこか出てくるの？」
平然とそう言ったのは山本さん。
「あ、はい。コンビニ行ってきます」
「そっか、気を付けて」
「はい」
2人の横を通って外に出る。心臓がどくんどくんと痛いくらい波打っているのは、まだ残る夏の暑さのせいだろうか。それとも……
side:ymmt
「さっきまで話してたから、急に現れると気まずいね…」
乾がいなくなってから、Aさんが僕にだけ聞こえるくらいの声で呟いた。さっきチラッと見たときバツが悪そうにしてたのはそれか、と合点がいったけど、果たして乾にはどう見えただろうと急に心配になる。客観的に見れば、つい先日ほぼ告白みたいなことをした相手が、他の男と2人でランチに行って帰ってきたところに遭遇、しかもなんか気まずい顔してる、ってことだもんね。そんなの変に勘違いされるしかない気がするけど。
あー…、僕これ、乾にめちゃくちゃ妬まれるやつじゃない？
「山本くん？」
Aさんの呼び掛けで我に返る。返事するの忘れてた。
「ちょっとボーッとしてました、すみません」
「そっか。じゃあ、お互い仕事戻ろっか」
「はい、ランチ楽しかったです」
「私もだよ」
ありがとうね、と微笑みを残して去っていくAさんを見て、やっぱり綺麗な人だと思う。乾が好きになる気持ちも分かるな。
それにしても、乾のあの反応…絶対Aさんのこと好きじゃん！やっぱり両想いなんじゃん！分かってたけど！
Aさんのこと助けてあげたいけど、あんまり関わっても乾に勘違いされて恨まれそうだしなー。うーん、難しい！
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作者名：猫舌 | 作成日時：2022年8月18日 14時
