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side:ini
俺の心はざわついている。何故かって、Aさんが須貝さんとオフィスを出るのを見てしまったから。しかも話の内容からすると、2人で飲みに行くようだった。
やっぱりAさんの隣りにいるべきは俺じゃない。俺みたいなお子様なんかじゃ。
…と思って割り切れればそれでいいのに、心の真ん中にずっと霧がかかったような不快感が続いている。男女が2人きりで飲みに行くからってデートとは限らないだろう、ただ歳が近いから仲良くしてるだけだろう、って自分に都合のいい解釈を積み重ねて、自分で自分を誤魔化して。…なんか馬鹿らしい。
仕事はまだ少し残っているけど、もう何も手に付かないから帰ろう。帰り支度をするために、俺はスマホを手に取った。
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side:sgi
「はあ…乾くんかわいいしかっこいいし何なの？何あの生き物？本当に地球人？」
「お姉さん、酔い過ぎですよ」
「なんか世界が回ってる」
「お水飲みな、ほら」
「ん、ありがとございます」
おかしい。Aはどちらかと言えば、酒には強かった筈。それがビールジョッキ1杯でこんなへべれけになっている。どういう状況？これが恋の力？
Aがまだここまで酔っ払ってないときに聞いた話を纏めると、Aは乾が好き、だが自分では釣り合わないと思っている、ということらしい。ごちゃごちゃ回りくどい言い方だったけど、要はそういうことのようだ。
「乾くんにはね、私みたいなおばさんじゃなくて、もっと若くて可愛い子と付き合ってほしい」
「Aはそれでいいの？」
「やだ」
「やなんじゃん」
「やだけど、やじゃない」
「やじゃないけど？」
「やだ」
「Aおもろ」
さっきからずっと自分のことを卑下してばかりだけど、一般的に見てもAは美人な部類だと思う。乾も美形だし、なんならむしろお似合いだと俺は思うけど。それを言ったらビールを一気飲みされそうになったので、もう言わない。
「須貝さん、ちょっとおトイレ」
「1人で行ける？」
「だいじょぶ」
「ゆっくり行ってきなー」
「ん」
ふらふらするAを見送って、ポケットのスマホに手を伸ばす。
「あれ？」
通知が来ている。
『乾：須貝さん、今って何してます？』
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作者名：猫舌 | 作成日時：2022年8月18日 14時
