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side:ini
思ってたより楽しそうにしているAさんを見て、あのとき咄嗟に水族館って言ったのは正解だったな、と思った。水槽をまじまじと覗き込んでみたり、かと思えば大型の魚に怯えて後退りしてみたり。Aさんみたいな綺麗な人がそんなことをするのを見たら、隠すのが大変なくらい口元が緩んでしまう。
魚を見ているのかAさんを見ているのか分からないまま順路に沿って進んで行くと、途中でAさんが「あ！」と声を上げた。
「乾くん！見て見て！」
Aさんが満面の笑みで指差す水槽を見ると。
「…ネコザメ？」
「そう！顔が猫に似てるから、ネコザメなんだって！」
「へー、そんなのいるんだ。知らなかった」
「乾くん、良かったね！水族館に猫いたね！」
何が「良かった」なのかは分からなかったけど、Aさんが嬉しそうなのは俺にとっても嬉しいことだった。それに、Aさんが俺の好きなものの為にこんなにはしゃいでくれるなんて。
あー、かわいい。どうしよう。好き。
館内を大体回ったところで、お昼を食べることにした。お昼時ということもあって併設のカフェは大混雑してたけど、なんとか空いてる席を見つけて座ることができた。そういえばAさんとご飯食べるのって初めてかも、と思ったけど、ゆっくりできる雰囲気でもなかったから、優雅なランチタイムを楽しむことはできなかった。まあいいや、それはまた次の機会で。
ご飯を食べ終わってカフェを出ると、ちょうど次の回のイルカショーの呼び込みをやっていた。
「Aさん、イルカショー見ます？」
「乾くんが良ければ」
「いいっすよ。あ、濡れる席行きます？」
「え、行きたくない」
「嘘ですよ。遠くから見ましょ」
「うん、そうしよー」
2人でびしょびしょになるのもいいかもなー、なんて思ったけど、Aさんのかわいい服が濡れちゃうのは勿体ない。てことで、何があっても濡れないであろう最後列に座った。
ショーの間、Aさんは「おー！」とか「すごーい！」とか一々声を上げていて、俺はやっぱりイルカよりAさんが気になって仕方なかった。
俺が一目惚れしたのは、クールなお姉さんのAさんだった。けど、今俺の横にいるのは、イルカを見て子どものようにはしゃぐAさんだ。どっちも俺の好きなAさん。
ねえ、Aさん。
Aさんの目に、俺は映っていますか？
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作者名：猫舌 | 作成日時：2022年8月18日 14時
