26 ページ31
何かジオルド様の怒りを買ったのだろうか。
買ったとしたら、この状況でそもそもどうやって怒りが生まれるというのだろうか。
しかし、そんな俺達の不安とは裏腹に、ジオルド様は明るい表情で顔を上げる。
今までも笑みを浮かべていたのに、初めて俺は彼の「笑っている」所を見た気がしたのは、何故だろうか。
「そうでしたか。斬新な訓練ですね」
そう切り返せるジオルド様、ある意味流石だと思う。
カタリナも、焦りや緊張がほぐれたのか、安堵の息を吐く。
物凄くリラックスしている。気を抜いている。
だから、カタリナも俺も誰も彼も、油断していたのだ。
「カタリナ様」
ジオルド様は、そんなカタリナの目の前で膝を付き、手を差し出す。
「本日は前回お話しさせてもらった、婚約の件で正式な挨拶に参りました。
―――私との婚約、お受けいただけますか？」
「え？あ、はい」
そしてカタリナは成すが儘に、土塗れの手を差し出す。
ジオルド様はカタリナの手を取り……そっとキスをした。
「………」
カタリナは「しまった」と言わんばかりの表情になるが、もう遅い。
「これでお前は正式にジオルド様の婚約者だ！」
満面の笑みで娘の婚約を祝福するお父様。
「今日は素晴らしい日です！おめでとうございます、お嬢様!!」
先程は物凄く色んな意味でパニックだったが、最終的にカタリナの婚約が決まって笑顔になるアン。
「………」
「お、奥様―――！」
途中から気絶してしまったお母様を抱える召使。
「は……はは」
「カタリナ、どうすんの、この先」
「とりあえず……明日から剣と魔力の訓練を頑張るわ」
………
カタリナの方は、どうにかして婚約をなかった事にしようとしているが
対するジオルド様は……満面の笑み…とても満足しているとでも言わんばかりの顔でカタリナを見る。
………
その日の夜
俺はカタリナの自室を訪ねる。
カタリナは物凄く弱々しい返事をして、俺を招き入れる。
「散々だったな」
「本当よ……何で私、あの流れで「はい」だなんて……しかもお母様から大説教喰らうし」
「まぁそりゃそうだろうな」
公爵令嬢がわんぱくになったかと思えば畑仕事って、世間体もあるけど色々と可笑しいし。
「はぁ〜……額の傷さえ治ればなぁ……早く消えないかなぁ……」
「………消えると良いよな、本当に」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桐谷 - 紗夜菜さん» 初めまして、コメントありがとうございます！現段階ではカタリナ曰く謎キャラなので、なるべく目立ち過ぎず、薄過ぎず、他の主要キャラと絡ませて話を進めていきたいと思います。 (2020年8月23日 17時) (
レス) id: 5b2885fab5 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜菜(プロフ) - カタリナのお兄さんが逆にキャラが濃すぎでもなく、面白いです、応援してます！ (2020年8月23日 15時) (レス) id: feb92a0363 (このIDを非表示/違反報告)
桐谷 - かんなさん» 初めまして、ありがとうございます！ゆっくり亀更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (2020年8月16日 17時) (レス) id: 578378c135 (このIDを非表示/違反報告)
かんな(プロフ) - とても面白いです。更新楽しみにしてます！ (2020年8月14日 0時) (レス) id: d024afc4b4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桐谷 | 作成日時：2020年4月16日 20時
