店員さんシリーズ

バレンタイン特設コーナー店員(Another2) ページ38

「ただいま」



勝手知ったるあいつの家
今日行くと連絡はしていたはずなのだけれど返事がない



よく耳を澄ますとシャワーの音が聞こえてきた






「ですよねー」




リビングに向かうと期待を裏切らない大量のお菓子
案の定トリュフやらクッキーやらが机いっぱいに置かれている
これ全部食べたら糖尿病になりそう





ただでさえ消費するのに大変なのに、増やすのも悪いな。中には俺でも分かるような有名なとこのものもたくさんある。そっと隠して明日玉にでもあげようか






「なーにしてんの」



「わっ」




首にまきつくあたたかい腕
頬にあたる濡れた髪の毛





俺の耳に顔をすり寄せてかなり機嫌がいいらしい
最近気づいたのだけれど、どうやらこいつは後ろから抱きつくのが好きらしい







「わ、なにそれ、誰からもらったの」






「え？」







「だってその紙袋のとこ、有名なとこのじゃん」






手に握りしめたチョコレートの入った紙袋をめざとく見つけられる
買ったはいいけど渡し方なんて考えてもなかった







「やる」




「は？」





「だから、お前にやる」






首にまきついた腕を振りほどき、押しつけるようにしてチョコを差し出した







「は？え？…え、これ北山買ってきたの？」






こくん、と頷く
自分でも顔が赤くなっていることがわかって、顔をあげられない






「うっわ」






ざばっと勢いよく正面から抱きつかれ、後ろにあったソファーに倒れこんだ





ぎゅうっと効果音がつきそうなくらい強く抱きしめられてちょっと苦しい




離れるように肩を押すと、ゆっくりと藤ヶ谷の顔が上がった
あ、かっこいい、と思ってしまうのは重症だろうか
水も滴るいい男ってやつだ






「んっ、ふ」





強く唇を押し付けられ、頭を抱えられながら深いキスをされる
藤ヶ谷とのキスは好きだ、もう他のことなんて考えられなくなるくらい気持ちいい






「はっ」







しつこいくらいにキスをされて、ようやく離れた藤ヶ谷はもう既に雄の目をしていた






「可愛いことするお前が悪い」






どうやら狼スイッチをいれてしまったようです
もう来年からチョコあげるのやめよう…

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