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不意に口をついて出た質問に、Aは画面の向こうで目を丸くして、
『えっ…』
って言ったっきり、さっきまであんなにおしゃべりだった口がきゅっと引き結ばれた。
答えたくないってんじゃなくて、恥じらってんだって、画面越しでも赤くなった顔見てたら馬鹿でもわかる。
「すっごく好きじゃん、俺のこと」
嬉しくて、事実を確認したくて言葉にしたら、胸の温かいのが熱くなって、俺まで顔がかっかしてきた。
『…好きじゃなかったら、キスに許可なんか出しませんよ?』
何故か悔しそうに眉寄せながら、それでも口元は嬉しそうな感じだったけど、俺の気持ちはその一瞬で舞い上がった。
「ああ!言った!言ったね!??」
思わず叫びながらスマホ持って立ち上がったら、
『ちょっ、画面揺れひどい!酔うからやめて!』
って、俺の手の中のAが叫んでる。
「ああああなんで電話してんだ俺たち!今すぐ会うべきじゃないの?会ってハグでもするべきじゃないのコレ??」
こんな画面の中のちっちゃいAじゃ、何もできない。
今、好きって言ってくれた愛しい人を、
抱きしめることも、
キスすることも、何一つ。
『おち、落ち着いて。てか、スマホ振らないで』
「落ち着いてられるかって!てかなんでそんな大事な言葉を電話越しに聞かされてんの俺〜!!もったいない!」
『ジョングクさんが聞くからでしょ!』
「素直に答えるくらいなら、さっき会ってた時にしてよ!保留にするならちゃんと引っ張って!駆け引き下手かよ!嬉しいけど!」
「俺も好きだよ!馬鹿!!!」
ドカンって感じで吠えたら、画面の向こうの小さなAが、怒った顔してたのに段々眉が下がって、口の端が持ち上がる。
『…なにそれ、ジョングクさん、めちゃくちゃ言ってるよ?』
くすって笑ったAが、ケラケラお腹抱えて笑いだして、俺も自分のドタバタがあんまりにも知能低くて笑えてきた。
それでやっと少し気持ちが落ち着いて、どさっとソファに座り直してから、スマホを縦置きに改めてセットして…本題を進めることにした。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年4月19日 23時