◇TH◇ ページ48
Aの細い肩を抱きながら、みっともなく泣いてる自分に嫌気がさすよ。
Aには泣いてるとこばっか見せてる気がする。
こっちに来てもらって、かっこいい俺をたくさん見せて、好きになって欲しかったのに上手くいかないもんだね。
７月の日本から帰る時に、髪の短くなったAが俺への警戒心をほぼゼロにした時から、ほんとは分かってた。
今抱きしめてても理解が深まるばかりだよ。
Aは俺に恋を始めるつもりが、もうないんだ。
Aの中で、すっかり終わったことになってるよね。
本当に認めたくないけど、顔見りゃわかるよ。
それでもAは俺への情があるから、そもそも俺たち心の相性は良いから。
キスも、こうして触れ合ことも許してくれてるのは、一度内側に入った俺が「不快じゃない」ってだけなんでしょ。
きっとそれだけ。
それに俺は、つけ込んだだけ。
本当は、サブマネ離れた理由聞きたかっただけだったんだ。
俺とのことはそんなに影響しないと思ったのに、突然だったから一瞬やっぱり俺が嫌になったとか、そんなことがあるのかって。
でも違った。
触れてわかったけど、Aが誰かとなんかあったんだろうってさ。
勘がいいのが嫌になるよ。
なんで気付いちゃったんだろ。
誰かに触れられることの、ここまでは大丈夫って線引が、明らかに前と変わってんだもん。
俺の見てないところで。
どうして。
誰が。
腸が煮えくり返るって、こんな感じなんだなって自分の腹を抑えつつ、本当は誰かに取られるくらいならいっそここで奪おうか、なんて恐ろしいこと考えなかったわけじゃない。
でも結局Aが諦めたみたいに俺を受け入れるから、逆に冷静になってしまってそれもできなかった。
最後に残った気持ちは、
恋人になれなくても、Aには好かれていたい。
もうこれだけ。
自分が健気すぎて笑えない。
どんだけ好きなのかって。
そりゃあ、
筆舌に、
尽くしがたいほど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 697人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フネ55
| 作成日時：2023年3月27日 6時
