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S「…ほんとさ、俺。佐藤さんはめっけもんだったと思うよ」
私の話を黙って聞いて、感心したように目を細めたセジンさんに、私は嬉しくなってウフフと笑う。
『褒めても今後のモチベーションになるだけですから。もっと褒めてください。どうぞどうぞ』
S「なんだ、いきなり距離解放してきたね？丁寧でぴしっとビジネスライクも良かったけど、そっちがほんとのAさん？」
あ、名前呼びだ。
セジンさんが初めて、しかも嬉しそうに微笑みながら呼ぶもんだから、私も嬉しくなってにこにこしちゃった。
『まあ、色々あって。私が変に壁作ってたなって反省しました』
S「俺ら、敵じゃないからね。それと。ありがとう。気付いてくれて」
不意打ちのお礼に、私は慌てて必要ない、って言いかけたけど。
背の高いセジンさんが少しかがんでひょいっと私の手を取って、両手で覆うように包んで、
S「長い髪、似合ってるのに、ほんとにごめんね」
って、私がこれから無造作に切り捨てる予定の髪を、惜しんでくれるもんだから、言葉をなくしてしまった。
S「メンバーの近くに女性を置くのはトラブルだよ。間違いない。でもこれは、色々相談して覚悟の上のことだったから、Aさんに負担はかけないつもりだったんだ」
S「でも、この間みたいなことが起こったりして。今回は大したことにはならなかったけど、Aさんが女性だから、もっとひどいことになってたかもしれないって思ったのも、まあ事実として」
『私も、それ考えました…』
S「うん。だよね。でも、俺たちがあなたに容姿の件を言ってしまうと、それはハラスメントになるからさ。Aさんが自分で気付いて、自分でそれ変えることを良しとしてくれることが、どれだけありがたいか」
S「でも、嫌になったら戻してくれてもいいんだよ。そういう世間の目線とも、本当なら戦っていかないといけないから」
そう言って、もう一度微笑んだ顔が、あんまり優しくて。
S「セジンさんが［お兄ちゃん］だったら、世界が平和になりますね」
って言ったら、セジンさんは以外と日本語わかってたみたいで、
S「オッパって呼んでもいいよ？」
って目を細めて、言ってくれた。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年2月16日 16時
