◇ ページ30
SJ「Aちゃん、めちゃ真面目に仕事してるなぁ」
ジンヒョンがそう言って、俺にスマホを差し出してきたから、ちらっとみたら、Aが作ったプレス対応用の短いQ&A回答の草稿。
俺のとこにも送られて、もうチェックして返事済みだったやつ。
SJ「これ他のマネヒョンなら、グループチャットにぺぺいってくるやつじゃん。それだと目滑りするからって、わざわざ個別にちゃんと送ってくれてんでしょ？彼女の方の手間なのにさ。ほんとえらいよ」
仕事丁寧だよなー、ってニコニコしてるジンヒョンに、俺は愛想笑いしつつ、内心全然穏やかじゃない。
ほら、好きじゃん。
もうAのこと、普通の女の子だって思ってない。
嫉妬とかじゃないよ。
まさか、ジンヒョンにそんなこと思うわけない。
ヒョンがAを恋愛対象に見てるなんてそんなこと、ナノほども思ってないよ。
そうじゃないんだ。
ただ、ジンヒョンが好感度上がった相手にひたすら甘くなるから、Aの方が、ジンヒョン好きになったらどうしようって。
ふ、と自嘲しちゃうよね。
俺、ほんと恋愛下手すぎる。
余裕ってどうやったら持てんの？
Aが俺を、好きになってくれたら落ち着けるのかな。
まだ、ピコほども、好きになってくれてないって知ってるから、焦るばかりなんだけど。
うん。
俺、知ってるよ。
Aは、まだ。
俺を恋愛対象として、好きじゃないって。
だから、余計に。
不安で。
こんなに自制が、効かないんだろうね。
空港でのあの日の俺の行動は、褒められたもんじゃないってことは、よくわかってる。
みんなに迷惑かけたことは、正直本当に悪かったと思ってる。
余裕がないにも程がある、ってセジンヒョンには言われたけど、気が付いたらあそこにいたんだ。
自分でも、どうにもできなかったこと、次はないぞって脅されても。
じゃあ、俺のこと捕まえててよ。
それか、Aを俺の側から離さないで。
じゃないと次も、保証はないよ。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年2月16日 16時
