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そういや、こいつの名前、何て言ったっけ。
テヒョンイヒョンの日本での恩人。
ヒョンたちがズルして、無理やりサブマネになった奴。
そんな感じにしか思ってなかったから、ほんとに名前覚えてない。
JK「あんた、名前、なんだっけ?」
サブマネの人は俺の言葉に、一瞬驚いたみたいで、子犬がSTOP!って言われた時みたいな顔した。
あれ、ちょっとかわいいじゃん。
って、とっさに思った自分の思考を慌てて打ち消して、俺はちょっと緩みかけた口元をぎってまっすぐ引き結ぶ。
サブマネの人は、驚いた顔は一瞬で、ストンって感じで元の顔に戻ると、
『佐藤Aです。ジョングクさんは、チョン・ジョングクさんですよね』
って俺の名前をフルで呼んだ。
「あらたまって、何言ってんの?」
『いやあ、なんか初対面の挨拶みたいだなって思って。握手もしますか?』
「するかよ。馬鹿じゃないの」
『馬鹿じゃないの?はどういう意味ですか?』
「知らない。自分で調べて。韓国語、勉強してんでしょ」
『ジョングクさんは、ちょっと意地が悪いですね?』
それ、本人に直接言う?
ぎょっとして顔見たら、ふって片頬だけ上げる感じで笑って
『馬鹿じゃないの』
「は?」
一瞬言われたことが理解できなくて、わかった瞬間かっと頭に血が登ったんだけど。
そんな俺に、Aはすっとサブマネの顔に戻って
『は、後で翻訳します。今の発音で合ってました?』
だって。
表情変わらないから、からかったのか、真面目に言ってるのかわからない。
「………しらね。トイレ行く。どいて」
押しのけるようにして横通り抜けて、挨拶も無しに立ち去ったけど。
話しやすい。
面白い。
ペンだって言うけど、憧れって言うより俺に対して、ただ「好印象」以上の感情を感じない。
あと、驚いた顔は、ほんと犬っぽかった。
トイレのドア開けながら、さっきのAの顔思い出して、ちょっと笑ってる俺がいた。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年1月30日 20時