◆You◆ ページ8
普通、入社まで猶予くれると思うんだけどね。
相当忙しいのか何なのか、こちらの都合の良い入社日を聞くではなく、指定された日から入社日を選ぶ、て感じだった。
今の仕事の旅行代理店は、親戚のおばさんの会社だったから、最低1ヶ月前の退職申請も普通だったらしなきゃいけない引き継ぎも何もかんも。
「Aちゃん、ファイト！」
だけであっさり退職手続き&送別会までしてくれて、本当に感謝しかないよ。
正直この一年ほんとに、仕事を叩き込んで教えてくれたから、やっと誰の手も借りずに仕事できるようになってたとこだったのに。
ビッグヒットへの転職は、そんなおばさんへの裏切りな気にもなって、ちょっと泣いたら
「Aちゃん。したいことと出来ることは違うし、望むことと叶うことも違うでしょ？」
「したくて、出来て、望んで、叶ったなら」
「やんなきゃ」
おばさん、目がマジすぎ。
裏切りとか考えんの、逆に自分の人生への甘えなんだなと思って、涙なんかすっとんだ。
その後は、ひたすら出国準備。
就労ビザ申請とか引越しなるべく簡単に済ますための事前荷造りとか、ものすんごくドタバタしながら。
ついに、今日。
ソウルに着いた。
『ソウル…空、汚な』
空港に着いて、エントランスへ移動する合間にみた空は、明らかな高科学スモッグ垂れ込める、スモーキーな景色だった。
清らかな田舎からやってきた私が馴染めるか、暗雲垂れ込めるわぁと思いつつも、迎えにきてくれたビッグヒットの社員の方と無事合流。
お名前は…キム・ハラムさん。
キムほんと多いな。
下の名前で呼ばざるを得ない感じ、日本人としては戸惑うばかりなんだけど。
仲良くないのに強制的に手を繋がれる感じ？苗字多いならしょうがないかもね。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年1月19日 17時
