◇ ページ48
「こっち来て」
Aの手を取って、シャワーブースの中に入ってドライヤーを探してスイッチオン。
ここまで瞬速だったから、Aはほとんどされるがままだったけど、ブオーって温風当てられたとこではっと目を見開いて
『いやいや、自分でできますから』
って俺に向かって手を伸ばす。
「させてって」
『ホボムさん!タレントさんが言う事聞きませんけど!』
Aはそう言ってホボムヒョンに助けを求めたけど、ヒョンは俺の顔見て、Aの顔見て、目をつむってんーん、って首を振った。
HB「タレントに言うこと聞かせるのがマネージャーの仕事でしょう。がんばりなさい」
ヒョンはセジンヒョンと違って基本的に俺の味方だから、俺はニコニコしながらAの顔をこっちに戻して、その長い髪を乾かしにかかった。
『変な方向にスパルタやめてくださいよ…!』
唇がぶにっと突き出してて、完全にすねた顔とかレア過ぎる。
さっきわたわたしたからか、すっかり仕事モードの顔が落っこちて、ほんと、まるで。
18歳の君みたい。
今の君も十分愛しいけど、2年間繰り返し思い出してたAは、こんな顔だった。
たしかにちょっと何考えてるのかわからない顔してるのが標準だったけど、わりと頻繁にそれは崩れて、こんな風に感情をあらわにしてきて。
それがたまらなくかわいくて、もっと見たいって。
思ってたんだっけ。
そんな事思い出したら、胸がぎゅうっと締め付けられて、口から愛しいが溢れそうになる。
好きだよって言いたいけど、
わかってる。
こっちきてまだ1ヶ月も経ってないのに、いくらなんでも早すぎる。
アー、これ、俺いつ告白できんだろ。
手も握れて、抱きしめて、頭触って、髪乾かして。
接触はこんなに許されてるってのに。
こんなに近くで、俺を見上げてくれるのに。
唇まで、ほんの数十センチだよ。
「ヒョン、これなんて拷問だと思う?」
聞いたら、
『拷問じゃなくて、修行だと思いなさい。がんばりなさい』
だって。
アー、そうですね。
味方であっても、俺に甘いとは限らないってね。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年1月19日 17時