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その彫像のようになった彼の方に、一歩進んで、
『さっきはごめんなさい。うっかり、その』
て、さっき名前を間違えたことを、まず謝った。
テヒョンさんが私の言い間違えからずっと、顔色悪いのなんとなく気付いてたから。
キム・テヒョンなら、今は十分すぎるくらい、良く知ってる。
鼓膜から人を惑わす低く甘く掠れたバリトンの声を持ち主で。
少女のような、妖精のような、悪魔のような美貌で。
無垢としか言いようのない振る舞いをする、四次元アイドル、でしょ?
あ、あと。
ダンスも正直上手すぎて、私は正直、歌よりダンスが好きかもしれない。
『それと、2年前。
テヒョンさんはちゃんと名前訂正してくれたのに、あの時、受け入れられなくてごめんなさい』
テヒョンさんは、ジンさんじゃない。
でも、名前が違っただけで、最初からテヒョンさんはテヒョンさんだったわけで。
今私を見下ろす、ちょっと狼狽えたような目とか、への字になってくる唇とか。
いつか見たのと、同じ人。
うん、大丈夫。
『もう、間違えませんから』
にこっと、笑う。
さっきの第一印象、悪かったと思うから。
ちゃんと上書きしとかなきゃって思って、自分の中で一番いい顔したつもり。
でもテヒョンさんはなぜか、明らかにがっかりした顔して力無く目を伏せて、それから、うん、て頷いた。
「Aは、悪くないよ」
って、だから呼び捨て。
て言うか、日本語。
その気遣い逆効果だよ、テヒョンさん。
もう間違えたりしないけど、顔はテヒョンさんなのに、声ジンさんみたいな感じでなんか妙にゾワってなるから。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年1月19日 17時