不完全恋愛【不死川実弥】

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翌日。





明日の夜、彼が帰ってくる。
が、あんな事があったせいで連絡はない。
出張だし、忙しいと思うし…と無理やり自分の中で納得して私からも連絡はしなかった。


きっと彼は、何食わぬ顔で帰ってきて私を抱きしめるのだろう。
そして私もまた、そんな彼に愛おしさを感じてしまうのだろう。





『なんか、疲れちゃったな…。』

立ち上がり、スーツから普段着に着替える。
玄関に置いてある実弥との写真をみてフッと笑みを零し、家を出た。






＊





｢お！やーっと来てくれたな！一人？彼氏は？｣

『今出張。ちょっと飲みたくなっちゃってさ。』


訪れたのは宇髄さんの働くバーである。
あの引越しの挨拶の日から何かと出くわすことが多く、宇髄さん、Aちゃんと呼び合うまでには親しくなった。


｢ふぅん？なんか訳ありな感じ？｣

『…まぁ、ね。強めのお酒作って？』


そう言うと彼は｢おっけ、まかせろ｣なんて言いながらシェーカーへと手を伸ばすのだった。





＊





『アッチの相性がいいから別れないんだって！
でも結婚はしないんだって！ねえどう思う宇髄さん！！』


｢あーはいはい、とりあえず水飲もうな〜？｣


強い酒を、と強請ったのは自分だがさすがにハイペースで飲みすぎた。
先程から本音がボロッボロに出て宇髄さんに絡んでいる。他のお客さんは離れたところで別のバーテンが接客しているからまだよかった。
スタッフが一人でしかもこんなに絡まれたら営業妨害にも程があるだろう。



『もうやだ…あいつなんか嫌い…っ。』

思ってもいないことを口にしてしまい、
そんなことを言ってしまう自分への嫌悪感も相まって涙がぽろぽろと溢れ出す。
女がバーで泣き喚くなんて、みっともないにも程がある。
しばらくして、さすがに周りの目が気になり、お金をカウンターへ置いて帰ろうとした時。




｢あと三十分待ってろ。俺上がりだから送ってくわ｣

そんな状態の女の子一人で帰せねぇよ！と困ったような笑顔で言われたのだった。
そして私の右手には、先程置いた一万円札が握らされていた。



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