不安 ページ23
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それからは、いつもと変わらない毎日の繰り返しだった。
ただ一つのことを除いては。
私は周りの目を掻い潜って宇髄さんとの逢瀬を続けた。
寂しさを紛らわすだけの都合の良い行為は、“日常”を繰り返すために何度も言い訳と嘘で塗り固めた麻酔薬のようなものだった。
実弥から貰えない言葉は、宇髄さんから貰った。
それが本当でも嘘でもどちらでも良くて、その時ばかりは私の乾いた心を満たしてくれた。
刺激が欲しかったわけではない。
欲求が満たされていなかったわけでもない。
ただ、無条件に愛されている実感が欲しかった。
いつかはやめなければならないのに、“今はまだ、もう少しだけ…”と先延ばしにしてしまうのは、“実弥以上に好きになれる人はこの先ずっと現れないかもしれない”という不安が日々の孤独をも上回って、私を捕らえて離さないからだ。
「最近どーよ?」
宇髄さんの働くお店で、宇髄さんが上がる時間までお酒を飲んだ後、ホテルに行くのがいつものパターン。
今日もその筈だった。
繁華街を歩きながら、普段はあまり実弥とのことに干渉しない宇髄さんが珍しくその話題に触れた。
『相変わらず…って感じかなあ。』
前ほどの期待も無いせいか、話すような出来事も無い。
ふーん、とだけ相槌を打った宇髄さんに、私は続ける。
『前にさ、私のどこが好きなのか聞いたんだよね。
そしたら何て答えたと思う?』
「んー、なんだろ。
でもそれ言うってことは、あんまり良い答えじゃなかったってのは分かるわ。」
『そう、なんだよね…』
少しだけ、自分の声が掠れた気がした。
『“俺を好きでいてくれるところ”だって。
それって、私が好きじゃなくなったら…、好きでいてくれないってこと、なのかな…』
泣くつもりなんて微塵も無かったのに、溢れ出る涙で視界が歪んで、歩くことも出来ない。
宇髄さんはそっと私の手を取った。
「俺は実弥くんみたいにAちゃんの心を揺さぶったり、どうしようもなく感情を引き出したりは出来ないかもしれないけど、少なくとも俺ならAちゃんを泣かせない。」
だからさ…と宇髄さんは続けた。
「Aちゃん、俺を選んでよ。」
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ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます…! 宇髄さんの「俺を選んでよ。」、裏設定を知ると尚の事、ぐう、となりました。からの唯梨さんのオチ……私は両方のパターンを(セリフまで)妄想させて頂いてから就寝した次第です。文字数が足りません、、次作もお待ちしてます!! (2021年10月14日 7時) (レス) @page23 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます!私は実弥と結婚しました( 〃▽〃)笑。途中ドキドキ動悸が止まりませんでした(TдT)次回作も楽しみにしてます❗ (2021年10月14日 5時) (レス) @page29 id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 完結!おめでとう!!!!!!最後の最後に私はてんてんと結ばれました…。やっぱ2人とも天才だわ!私得でしかないコラボをありがとう🤍完結後のコメは私が一番最初に貰いたかった!!!!連投失礼! (2021年10月13日 23時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!手に汗握る展開に心拍数がヤバかった!そして、急展開、どっちとも取れるオチが好きな私には堪んない!大好きな二人の合作が読めて幸せだったよ!次作!!!楽しみ過ぎる!りりちゃんのギャグ甘!読みたい!!! (2021年10月13日 23時) (レス) @page28 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 奏海さん» 師範が本当最高のオチを書いてくれたよ…流石すぎるよ…完結直前に早まってコメントしちゃう奏海ちゃん最高だよ!らぶ❤️❤️ (2021年10月13日 23時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唯梨 x他1人 | 作成日時:2021年10月1日 22時