宴も酣 ページ21
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「夜も更けてきたし、そろそろ帰るかァ。」
これ以上飲んだら完全に酔い潰れてしまうギリギリのところで、実弥は宇髄さんが次のお酒を注ぐのを止めた。
あれから、話題はどんどん変わって、誰も私たちのこれからについて触れることは無かった。
相変わらずノンアルコールカクテルを出され続けた私は、とうに酔いなんて醒めて、素面の状態に近い。
…乗り切った。
あわや修羅場と思った酒の席は、何だかんだで楽しい飲み会で終わることが出来た。
また飲もう、と言って私たちは別れた。
私はもうこの3人でテーブルを囲むのは懲り懲りだ。
密かにそんなことを考えながら玄関のドアを開けて、やっと帰宅した瞬間、勢いよく腕を引かれて、そのまま廊下の壁に押し付けられた。
私は何も言わずに視線を絡めて、じりじりと目の前に迫る実弥の唇に、自然と自分のソレを重ねた。
徐々に深くなる口付けはお酒なんかよりずっと強力に私の思考をどろどろに溶かしていく。
しっとり濡れた瞳で見上げる私を余裕なく見下ろす実弥の表情に、今までにない高揚感が私を襲った。
この後に何が待っているかなんて、どろどろに溶けた思考でも容易い。
*
執拗なまでに抱き潰されて、激しく揺さぶられるようなこの感覚。
あぁ、やっぱり私はこれが良い。
漏れる吐息も、筋肉の凹凸を這うように伝う汗も、全部私だけが知っている実弥だ。
『実弥…好きだよ。』
「あァ…」
『…好き。』
「うん。」
溢れるように出た想いに、相槌のような返事が返ってきたのは、余裕が無かっただけなのだろうか。
私を包み込むように抱きしめて、寝る体勢に入ろうとする実弥の胸に私は顔を埋めた。
『実弥…』
籠った声が腕の中に響く。
「んー?」
『私の、どこが好き?』
1つだけで良い。
愛されている実感が持てることなら…
今にも寝落ちそうな実弥に面倒な質問を投げるのは、安心が欲しいだけの欲張りな心が、満足いく言葉を期待をしているからだ。
「俺を好きでいてくれるところ、かなァ。」
そっか…と力無く乾いた笑いを浮かべて、私はすぐに目を伏せた。
今目を開けたら、きっと静かに泣くことは出来ない。
ねぇ、それって私が好きじゃなくなったら、どうなっちゃうの?
喉元まで出かけた言葉を私は飲み込んだ。
結局そこで議論をしたとて、私は彼を好きでいることを辞めることができないのだから。
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ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます…! 宇髄さんの「俺を選んでよ。」、裏設定を知ると尚の事、ぐう、となりました。からの唯梨さんのオチ……私は両方のパターンを(セリフまで)妄想させて頂いてから就寝した次第です。文字数が足りません、、次作もお待ちしてます!! (2021年10月14日 7時) (レス) @page23 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます!私は実弥と結婚しました( 〃▽〃)笑。途中ドキドキ動悸が止まりませんでした(TдT)次回作も楽しみにしてます❗ (2021年10月14日 5時) (レス) @page29 id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 完結!おめでとう!!!!!!最後の最後に私はてんてんと結ばれました…。やっぱ2人とも天才だわ!私得でしかないコラボをありがとう🤍完結後のコメは私が一番最初に貰いたかった!!!!連投失礼! (2021年10月13日 23時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!手に汗握る展開に心拍数がヤバかった!そして、急展開、どっちとも取れるオチが好きな私には堪んない!大好きな二人の合作が読めて幸せだったよ!次作!!!楽しみ過ぎる!りりちゃんのギャグ甘!読みたい!!! (2021年10月13日 23時) (レス) @page28 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 奏海さん» 師範が本当最高のオチを書いてくれたよ…流石すぎるよ…完結直前に早まってコメントしちゃう奏海ちゃん最高だよ!らぶ❤️❤️ (2021年10月13日 23時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唯梨 x他1人 | 作成日時:2021年10月1日 22時