不完全恋愛【不死川実弥】

誘い ページ15

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「いつでも頼んなよ。」


別れ際に彼はそう言ってひらひらと片手をあげて私を見送った。


ただの女慣れなのか、年上の余裕なのか、簡単に満たされた心はあっという間に宇髄さんでいっぱいになっていた。




他所の男に抱かれた後、どんな顔をして彼氏と会うのが正解なのだろうか。



後ろめたさが無いと言えば嘘になるが、思っていたよりも私は冷静だった。




お風呂に入って、部屋の掃除をした。
何かをしていないと落ち着かないのは、なかなか消えてくれない昨夜の温かな感触の所為だった。



割れ物を扱うように丁寧に愛されるのは、初めてだった。



相手が実弥なら、どんなに幸せだっただろうか。
考えるだけ無駄なのに、正しさというのはいつも移ろうだけだ。
宇髄さんは決して私の孤独を理解しているわけではないけれど、心の隙間をすっぽりと埋めるくらいには十分すぎる距離感と包容力を持ち合わせていた。



夢から醒めたような感覚に恐れすら感じて、私は長いため息を吐いた。




＊




いつのまにか眠りに堕ちていた私は、薄らと夕方の影を落とした部屋で目を覚ました。



1人で目覚めるのは苦手だ。
どうしようもない虚しさが目の前を埋め尽くして、すべての気力が削がれるような気分になる。



ソファーに置きっぱなしになっていたスマホを拾い上げ画面を見れば、実弥からの連絡が入っていた。



帰りの時間を知らせるだけの淡白なメッセージに『待ってる』と返すと、意外にもすぐに既読がついた。



「駅まで来れる？」


私はカーテンをそっと開けて外を見た。
雨が降っている訳ではない。


「お隣の、宇髄さんのとこに飲みに行かね？」


続け様に送られてきたその誘いにドキリとした。
昨日の今日で、というか今日の朝まで一緒にいた宇髄さんと、それこそどんな顔で会えば良いのか…


断る理由を探したが、寝ぼけた頭ではろくな理由が浮かばない。





すると、不意に持っていたスマホが小刻みに震えた。






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