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「…………なんで。なんでここにいるの」
「……………………のんちゃん、」
期待しちゃいけなかった。
でもそれしか考えられなくて。
もう一回、どうして？と聞いて、なにも言わないのんちゃんの腕を叩く。
のんちゃんは、重たそうに口を開いてわたしから視線をそらした。
『お前の、泣き声、が。
………なんか、ほっとけなくなって』
戸惑ってる。動揺してる。
自分で告白しといたのに、照れている。
「…………いかへんの？」
『いったらお前がまた泣くやん』
「でも、」
新幹線の出発するアナウンス。
おとんには連絡してあるから、って笑う。
のんちゃんは、わたしのことを慰めるのを優先に、自分を見失っている。
大好きな彼との想い出はなんだか薄く色あせたようで、それでもわたしの肌に触れる彼の温かさは、これからもずっと続くようだ。
わたしのため。
彼はわたしが泣くから、ここにいるんだ。
「……………………ば、か」
『…………え？』
わたしのためなんて、ほんとばか。
のんちゃんは。大ばか者だ。
『それでもええから、』
のんちゃんの大きな体が一歩近づく。
息する一瞬、彼の言葉に驚く一瞬。わたしはこれ以上ないくらい強く抱き締められた。
『そばにいさせてほしい』
『だめ？』なんて。そんなはずない。
わたしは、首を横に振った。
「ほんまに、ええの？」
『あかんけど、(笑)』
のんちゃんの笑い声、それに混ざった涙声。
回した腕は、頭にのびてリズムよく頭を軽く叩いた。
「…………のんちゃん？」
『なに？』
わたしは彼のパーカーを強く握りしめていた。
吹き抜ける微風が、涙のあとを乾かして。
「わたしも、好き。」
『…………』
「小さい頃からずっと好きでした。
のんちゃんと再会したあの日から、逢ってなかった１０年間も、
いままで、毎日ずっと。大好きです。」
やっと、やっと言えた。
一番いいたかった一言が、十何年とかけて、やっと言えたんだ。
『…………なんか、照れる』
そっと離れてしまう温もりが寂しい。
でもお互いの腰に手は回ったまんまで。
『おれの彼女になってください』
わたしが頷けば、後頭部にあった手が、引き寄せられて。
はじめてのことで、どうしたらいいのか分からず、逃げるように顎を引いたけど、あっさりのんちゃんによって奪われてしまった。
両想いになってからのはじめてのキスは、誰かがいうように、イチゴの味なんかじゃなくて。
さっきまで香ってた涙の味がした。
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楓花(プロフ) - Moekoさん» ありがとうございます！甘噛みも水しぶきも読んで下さりとてもうれしいです！ありがとうございます！水しぶきの方は甘噛みより書き方がグダグダでしたが、そう言ってもらえてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2018年3月26日 23時) (
レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
Moeko(プロフ) - 甘噛みピアスを読ませていただいて、楓花さんの小説の書き方にハマりました！それで、この小説を見つけて呼読んでみたら、後半泣いてしまいました！とても、良かったです！これからも頑張ってください！ (2018年3月26日 16時) (レス) id: 1f431c2243 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - 綾小瀧さん» こんな昔の作品を読んでくださり、ありがとうございます！泣かせるつもりはなかったんですけど（笑）感動してくれたのなら嬉しいです！これからも頑張るので、よろしくお願いします！ (2018年3月8日 16時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
綾小瀧(プロフ) - 後半、涙が止まらなくなってしまいました。本当におもしろかったです！これからも頑張ってください！ (2018年2月27日 16時) (レス) id: d50cc77518 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - こたきしょこらさん» ありがとうございます！泣かせる気はなかったんですけど、そう言ってくださりうれしいです。これからもがんばります！ (2017年8月29日 17時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楓花 | 作成日時：2017年6月5日 22時
