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『…………あかん、そろそろや』
嫌だ。
いってほしくなかった。
でもそんなこと、言えなかった。
下を向き、ぎゅっと唇を噛み締める。
『…………じゃあな』
わたしがなにも言わないから、のんちゃんは静かに息吐いて。
最後に、わたしの頬を両手で包むと、顔をあげた。
のんちゃんと目があって、恥ずかしくて。
ますます、喉の奥の言葉が出てこなくなる。
『最後やで？(笑)』
ちゃんとおれをみろや。
そう言うように、しっかりわたしの顔を、大きな手で包み込んだ。
親指が、わたしの首から耳のしたを擦って、くすぐったい。
わたしの口からなにかを聞き出すように、わたしの言葉を待ってから、のんちゃんは口を開いた。
『じゃあな』
「…………ありがとう」
ダメだ、わたし。
これしか言えなかった。
必死に絞り出したはずの言葉は、２番目に伝えたかったこと。
わたしの頬の手が、いなくなる。
「……………………待って、」
その手を咄嗟に掴んだ。
のんちゃんは、いまにも泣きそうな潤んだ目で、こちらを見つめてる。
とてもきれいな笑顔だった。
それに圧倒されるように、緩んだ力。
離しちゃダメ。
絶対後悔してしまうのに、残るのは後悔だけなのに。
そう分かってる。分かってたのに。
「元気でね」
そう言って、手を離した。
のんちゃんがいってしまう背中を見るのが辛くて、また下を向いた。
目の裏に焼き付く、小学校二年生の時の映像。
フラッシュバックして、その映像までも歪んでく。
そのときだった。
ふわっと、鼻と耳にかかる甘い香り。
『大好き、やで……………』
吐息のようなその声が、耳にかかった。
.
その声の主がのんちゃんだ、と分かって。
急いで顔をあげたとき、そこにはもうのんちゃんはいなかった。
「…………っ、」
また堪えられなかった涙がボロボロと溢れだす。
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楓花(プロフ) - Moekoさん» ありがとうございます！甘噛みも水しぶきも読んで下さりとてもうれしいです！ありがとうございます！水しぶきの方は甘噛みより書き方がグダグダでしたが、そう言ってもらえてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2018年3月26日 23時) (
レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
Moeko(プロフ) - 甘噛みピアスを読ませていただいて、楓花さんの小説の書き方にハマりました！それで、この小説を見つけて呼読んでみたら、後半泣いてしまいました！とても、良かったです！これからも頑張ってください！ (2018年3月26日 16時) (レス) id: 1f431c2243 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - 綾小瀧さん» こんな昔の作品を読んでくださり、ありがとうございます！泣かせるつもりはなかったんですけど（笑）感動してくれたのなら嬉しいです！これからも頑張るので、よろしくお願いします！ (2018年3月8日 16時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
綾小瀧(プロフ) - 後半、涙が止まらなくなってしまいました。本当におもしろかったです！これからも頑張ってください！ (2018年2月27日 16時) (レス) id: d50cc77518 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - こたきしょこらさん» ありがとうございます！泣かせる気はなかったんですけど、そう言ってくださりうれしいです。これからもがんばります！ (2017年8月29日 17時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楓花 | 作成日時：2017年6月5日 22時
