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「のんちゃん」
ふっ、て笑って、もう一回わたしの名前を呼ぶと、丁寧にわたしの頭を撫でた。
「覚えててくれたん?」
『当たり前やろ』
ま、忘れてたけどって照れ臭そうにふはって笑うと、鼻の下をさすった。
「でも、ありがと」
そうは言うけど、ほんとはお別れの時にこんなこと言われちゃうと、とっても辛くて。
やっと思い出してくれたのに、あと十何分後にはお別れなんだ。
わたしのひきつった笑顔に、のんちゃんも困ったように、笑顔向けて。
優しくて、小さい頃から大好きな温もりが、肩に軽く触れた。
それを合図に、右目からまた雫がこぼれて。
もう歪んだ世界で、彼のことをこの瞳で見れなくなってしまう。
『なんやねん、おれが泣かしたみたいになるやんけ』
もう止まらない涙と嗚咽を隠すために、両手で顔をおおった。
グスッ、と鼻をすする音だけが響いて、のんちゃんが手をのせてた肩も止まらなく震える。
やがて、その手はわたしの耳にいって、崩れた髪をスラリ、とかけてくれた。
そのまま、耳のラインをなぞって、わたしの手のしたに滑り込むように、輪郭をなぞった。
『おれ、お前がおればなんもいらなかったんや』
そんなこといま言われても、困るだけだよ。
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楓花(プロフ) - Moekoさん» ありがとうございます!甘噛みも水しぶきも読んで下さりとてもうれしいです!ありがとうございます!水しぶきの方は甘噛みより書き方がグダグダでしたが、そう言ってもらえてとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2018年3月26日 23時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
Moeko(プロフ) - 甘噛みピアスを読ませていただいて、楓花さんの小説の書き方にハマりました!それで、この小説を見つけて呼読んでみたら、後半泣いてしまいました!とても、良かったです!これからも頑張ってください! (2018年3月26日 16時) (レス) id: 1f431c2243 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - 綾小瀧さん» こんな昔の作品を読んでくださり、ありがとうございます!泣かせるつもりはなかったんですけど(笑)感動してくれたのなら嬉しいです!これからも頑張るので、よろしくお願いします! (2018年3月8日 16時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
綾小瀧(プロフ) - 後半、涙が止まらなくなってしまいました。本当におもしろかったです!これからも頑張ってください! (2018年2月27日 16時) (レス) id: d50cc77518 (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - こたきしょこらさん» ありがとうございます!泣かせる気はなかったんですけど、そう言ってくださりうれしいです。これからもがんばります! (2017年8月29日 17時) (レス) id: 3e07948000 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楓花 | 作成日時:2017年6月5日 22時