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蜃気楼*21 ページ21

*




ふわふわと温かいものに包まれる感覚に目を覚ました。
体を起こして周りを見渡せば、間違いなく俺たちの部屋だった。




窓から光はまだ差し込んでいなくて、夜であることがわかった。
手元のスマホで日付を確認する。
9月16日、3:06。



「…………はぁ〜〜〜〜…」




成功した安心感からため息が漏れ、再び枕に頭を沈める。

そしてもう一度日付の確認をした。
……3:06。





こんなことは初めてだった。
いつも、俺が買い物に出る直前の時間……14:50に戻っていたはずだ。


直感で、これが最後のチャンスだ、と思った。

体を起こして、隣で寝ている北山を揺さぶった。



「…きたやま、……北山っ」

「………、ん……なんだよ……」

「起きて、いますぐ!」

「……まだ夜だろ、」



俺に背を向けてもう一度寝ようとする北山の肩を無理やり抱いて起こす。

北山は目をくしくしと擦りながら少しずつ目を覚ましているしているようだった。




「…んー、…なんだよぅ」

「いますぐ、出かけよう」

「はあ?今何時だと思って、」

「3時、…も、いいからはやく!」

「ちょ、なんなんだよ、…っうわ!」



がばっと布団を剥いで着替える。
北山のクローゼットも開けて服を適当に選んで投げつけた。
急かす俺に流されるように半分くらいしか起きてない北山も着替え始めた。




財布と携帯と、車のキーを手にして、家を出た。
未だよくわかっていない北山を、ぎゅうぎゅうと車に押し込んでアクセルを踏んだ。




「…藤ヶ谷、そんなに急かして、なんのつもり?つーか、どこ行く気だよ」



ようやく目が覚めてきたらしく、案外はっきりと話している。



「…きたやま、…あー、いや、……ひろ、」

「…なんだよ改まって」

「……その話あとででもいいかな」

「どこ行くんだよ」

「海…って言ったら、わかってくれる?」



北山は、何かを察したんだろうか。
はっとしたような雰囲気を隣から感じた。
そして、わかった、と小さく聞こえた。





*

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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時

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