蜃気楼*14 ページ14
*
はた、と気づくと俺は家のソファーに座っていた。
成功、した……
「きたやまぁ、俺ちょっと買い物行ってくる」
このセリフを聞くのももう三度目だ。
「待ってっ…」
「なに？どうしたの」
ここだ、ここの言葉を間違えてはいけない、何があっても……
「なぁ、今日は、家にいよう？」
「いや、明日の朝、コーヒーないと困るだろ」
「…いらない」
「朝コーヒーないと機嫌悪くなるじゃん」
たしかに、なる、いつもなら。
だけど、今太輔を行かせれば、それどころではなくなることもわかっている。
「だからいらないってば、」
「なんで？俺がひとりで行くって言ってんのに、なんでひろがそんなに止めんの？」
太輔が様子のおかしい俺に怪訝な顔をする。
変だよ、だって俺はもう今日を迎えるのは三度目だ。
「いらないものはいらない、」
「だから、なんでって聞いてるじゃん！なんで答えないの？」
…ぁ、まずい
なんか喧嘩になりそうだ
喧嘩なんてして家を飛び出して行かれたらたまったものではない。
これ以上強く言ったら危険だと俺の頭は冷静に判断する。
「なぁ、お願い、頼むから、たいすけ………」
縋りつくようにねだる。
これを失敗したら、太輔はきっと出かけてしまう、
そのリスクを背負った途端、声が震えて涙がぐっとこみ上げる。
もう一度死なせるわけにはいかない……
「…はぁ、もー、どーしちゃったわけ」
呆れたようにぎゅっと俺を抱きしめる。
「…家にいようよ」
「もー、わかったから、なんでひろが泣きそうなの」
ぎゅ、と太輔の服をつかむ。
「ひろ、疲れてるんじゃない？少し、寝ようか」
「……うん」
ふたりでベッドにもぐりこむ。
俺の顔からそんなに不安が滲み出ているのか、太輔は困ったように眉を下げて笑いながら俺をぎゅっと抱きしめて、頭をぽんぽんとなでてくれた。
気を張っていたせいか、急な眠気が襲う。
ていうか、時間戻したりしてた関係で、しばらく眠っていない、気がする……
「…たいすけ……」
「なに…んっ」
ぐ、と太輔の首に腕をまわして引き寄せる。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを繰り返す。
失いたくない、太輔を……
そんな俺をなだめるように頭を撫でながら優しくキスに応えてくれる太輔の温度が心地よくて、気づいたら意識を飛ばしてしまっていた。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました！！そう言っていただけて嬉しいです。｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2018年7月27日 0時) (
レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます！ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました！！ (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます！そのように言っていただけて本当に嬉しいです｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です！また次のお話も楽しみにしています……！！ (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます！更新頑張りますのでよろしくお願いします！⊂*｀∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しょこら
| 作成日時：2018年7月13日 12時
