蜃気楼*10 ページ10
*
「ちょ、ちょっと待って、太輔」
…ん、この声……
声の方向に目をやると、ひろがいた。
夢、見てるのか……
あれ、あのあと俺、どうやって家に帰ったんだっけ？よく覚えてない……
「ん？どうしたの？」
ひろはソファーから立ち上がって俺に近づいてくると、ぺた、と俺の頬に触れた。
「あったかい……」
「何言ってんだよ、」
続いて自分の腕をつねる。
「いて、」
「さっきから、何言って……っ！」
この会話、聞き覚えが……
あの瞬間の夢を、見てるの？
ん？いや、待てよ。
ひろの手、たしかに、あったかかった……
「ひろ……」
「な、に、たいすけ……んっ」
なぜか少し緊張した表情のひろに優しく口づける。
あったかい、やわらかい、間違いなく、ひろ…
唇を離せばうるうるした瞳で俺を見つめる。
「…たいすけ？どうしたの」
失ったはずのひろが、目の前で、温度をもって、そこにいる。
夢って、温度とか、あったっけ？
ひとつの考えが頭によぎる。
いやいや、そんなまさか、アニメじゃあるまいし、
……だけど俺、本当に、どうやって帰ってきた？
ぐるぐると思考を巡らせる。
ぱっとテレビの隣の棚に目をやると、1匹になったはずのテディベアが2匹……
カレンダーの日付も、9/16だ。
時間が、戻ってる……？
どうして、なんで、どうやって、
そんなことはどうでもよくて、とりあえず目の前のひろを守らなきゃ……
そう思ったときに、玄関先からがさがさと音が聞こえる。
まずい…！
「たいすけ、行ってくるよ」
「…！ま、待って！！！」
慌てて引き止め、玄関へ急ぐ。
きょとんとした顔のひろ。
「なんだよ、俺が行くって言ったらいいよって言ったじゃん」
きょとんとした顔から一転、ムスッとした顔で俺に言ってくる。
俺、そんなこと言った？
いろいろ考え過ぎてて、テキトーに返事したのか…
「だめ。やっぱ、俺が行く」
「やだよ、なんで？俺が代わりに行くって」
「俺、コーヒー以外に買うものあるから」
「俺だってあるって」
らちが明かない。
でも俺だって譲れない。きっと神様が俺に与えてくれたチャンスだ。
ここでひろを守れないで、いつ守るんだ……
「はぁ…わかった。じゃあ、一緒に行こう」
危険な目に遭いそうになったら、守ればいい。
ひろは、俺の言葉に少し微妙な顔をしたが、しぶしぶ了承した。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました！！そう言っていただけて嬉しいです。｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2018年7月27日 0時) (
レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます！ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました！！ (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます！そのように言っていただけて本当に嬉しいです｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です！また次のお話も楽しみにしています……！！ (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます！更新頑張りますのでよろしくお願いします！⊂*｀∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しょこら
| 作成日時：2018年7月13日 12時
