ずっと一緒に*2 ページ33
*
言われたとおり、扉を開けて左に曲がる。
部屋を出れば落ち着いたこげ茶の西洋風の扉がいくつも並んでいる。
千賀さんの指し示したであろう、扉、に手をかける。
「…たい、すけ」
扉を開ければ、ここが教会であることがわかった。
赤いカーペットの敷かれた先に、太輔が同じように白いスーツに身を包んで立っている。
俺の声を聞いて振り向いた太輔が、にこ、と優しく笑った。
あぁ、なんて綺麗なんだろう、ぐっとこみ上げる涙がこらえきれなくて視界が歪んでいく。
その場で立ちすくんで動けない俺を見て、太輔が近づいてくる。
「……ひろ、似合ってる。すごく素敵だよ」
「…っ、たい、すけも、かっこいい………グス」
「もー、なんで泣くの。ほら、行こう?」
そう言って差し出された手を掴んで、一生離すまいと心に誓った。
太輔に手を引かれるまま奥へ奥へと進んでいく。
俺たちしかいない教会に、履きなれない革靴がコツン、コツン、と音をたてた。
一番奥まで来たところでふたりで前を向いて立ち止まる。
太輔に肩を優しく掴まれて、ぐ、と太輔の方に向き直らされる。
太輔はポケットに手を突っ込むとそこからキラキラと光るシルバーのピアスを取り出した。
そういえばさっき、いつもしているピアスを外されたっけ、
太輔の指が左耳に触れる。
真剣な太輔の顔を間近で見て、本当に、綺麗だな、なんてまた思う。
太輔がにこりと笑って、ピアスが通されたのがわかる。
「見えないのが残念だな、」
その笑顔が本当に優しくて、急に照れくさくなって、はぐらかすような言葉が口をついて出た。
「宏光、」
ほら、また、これだ、
ふだん宏光なんて呼ばないくせに、
「こっち向いてよ、…宏光」
太輔の手がそっと頬に触れ、向き直ると、じわじわと滲む視界の中、真剣な、でも少し緊張した太輔の表情が見えた。
すとん、とそのまま俺の視界から消えると、左手をとって跪いた。
そして2年前と同じように、薬指にキスをした。
「宏光、必ず、幸せにする。だから…」
キスをしたあと俯いたままだった太輔がまた立ち上がり、緊張しているのだろうか、目の前の喉仏が一度だけ上下した。
「…俺と、結婚しよう。」
ぽろ、と涙がこぼれたのがわかった。
法律も、人の目も、何も気にならない、
太輔さえあれば、なにもいらない、
なんとなく蓋をしていたその気持ちが間違いなく姿を現した。
*
289人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時