赤い牙*59 ページ9
*
「チュ…、はぁ、」
「んぅ、……ん、…」
上半身を重ねたまま、余韻を楽しむように優しくキスを繰り返した。
吸いついたそのやわらかい舌はまだ熱を持っていて、それすらもぞわぞわと快感に繋がった。
なんだか名残惜しくてお互いにずっと唇を合わせていた。
「好き、宏光……」
「ん、俺も…」
合わさった唇の隙間から伝え、汗ではりついた前髪を避けて、やさしく頭を撫で、首を辿って背中も撫でた。
「あざ…大変だったね。言えない環境でごめん」
額にキスを落とすと、宏光は嬉しそうに、くすぐったそうに笑って首を振って、大丈夫、と言った。
「俺のせい、だよね」
「…ううん、って、言いたいんだけど、ごめん」
俺の牙が、宏光の真っ白な翼を黒く染めてしまったのだと思うと、ひどい罪悪感に駆られた。
「もう、…戻らない、の?」
「…うん。一度黒くなったら、戻らないし、…全部黒くなったら、……死ぬ」
その羽が全て黒くなったらどうなるか、…さすがに俺でも知っていた。
「血、吸うの、やめたら、それ以上進行しなくて済むんだよな、」
「あは、うん、まぁ、そうだけど。でも俺のからだ、太輔の大事なごはんでもあるから。」
「そん、な、」
「まだ大丈夫だよ。俺天使だから、人間みたいにすぐ死なない。それに俺、まだ若いし。人間でいう生命力っていうの?年取った天使よりもあるから」
宏光の言葉は、まるで俺のためなら死ぬことも厭わないと言っているのと同じだった。
そして、その命は、絶えることが前提で、人間よりも長く持つと、ただそれだけだった。
「…俺、嫌だ………」
「へ、」
「宏光がいなくなるくらいなら、血なんて、別になくてもいい。」
「なに言って、お前こそ、血がないと死ぬだろ!」
「俺人間の飯だって食えるし、我慢すれば…!」
肩をつかんで訴えると、宏光の手のひらが伸びてきて頬に触れた。
その目には涙がたまっていて、やさしく笑って目を細めるとつぅ、と伝った。
「…俺なんかのこと、そんなに愛してくれなくても、いいのに、…なんでお前は……」
宏光は、バカだな、と小さくつぶやいて、俺の頬から離した手で涙を拭った。
「宏光こそ、バカだろ」
「…んだよ、」
「バカ、ほんとに。…俺なんかのために死ぬとか、バカ、だろ」
言葉の隙間で、涙が浮かんでくるのがわかった。
なんとか、しなきゃ、宏光を失わないために、俺の息が絶える前に、できることは、
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あこ(プロフ) - 早速赤い牙が更新されていてうれしいです!やっぱり天使なKさんがかわいくてしあわせです。しょこらさんのペースで更新されるのを楽しみにしています。 (2020年5月27日 0時) (レス) id: 2d7ec12d07 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - みちこさん» みちこ様。はじめまして!読んでいただきありがとうございます!ゆっくりにはなりますがまた更新頑張りますので、読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年5月26日 10時) (レス) id: 06e5afaa35 (このIDを非表示/違反報告)
みちこ(プロフ) - 初めまして^_^このお話好きで読んでいました。暫く更新なかったようなので更新されてとても嬉しいです^_^楽しみにしていますがしょこらさんのペースで無理なく(^^) (2020年5月26日 8時) (レス) id: c83a8a8018 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - しょこらさんはじめまして!しょこらさんの作品どれもだいすきです!特に熱中症シリーズのFKさんがラブラブで最高でした!赤い牙の続きも楽しみに待ってます! (2019年2月25日 20時) (レス) id: 2d7ec12d07 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - ともさん» まだ書いたことがないのですが、できる限り善処致します!リクエストありがとうございます!! (2018年11月21日 23時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年11月16日 11時