検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:43,013 hit

赤い牙*51 ページ1

F side




もう、我慢の限界だった。

最初は、北山のからだだけあればよかったはずだった。




それなのにいつからか、俺が本当に欲しいものは、北山のからだから、心へと変わっていた。





心が手に入っていないとは思わない、
でも、宏光がたまに歪んだ顔をする、
宏光が俺に隠していることがある、

そんな小さなことですら耐えきれなくなってしまうくらい、俺は宏光の全てが欲しかった。





隣で俺に手を引かれる宏光の表情は、俯いていてあまり見えない。
ぽってりと厚ぼったい下唇が震えている、気がする。






「宏光、」

「…」

「俺が怖い?」





俺の言葉に、弾かれたように顔を上げた。
ばち、と目が合うと、その目には、今にもこぼれそうなくらい涙がたまっていて、
ぶんぶんとその頭が否定を表したとき、勢いで涙が少し散った。





「…もう、なんつー顔してんだよ、」




宏光の涙に、腹の底から湧いて来るような怒りと嫉妬の感情が、少し鎮まった。
掴んでいた手首をゆっくりと解放すると、血が止められていたのかそこは白かった。





そのままそっと手を握ってはじめて、宏光の手が震えていることに気づいた。





「…ごめん」




謝ったのは宏光だった。

俺に隠し事してるから?
謝るってことは、やっぱり言えないってこと?





一度鎮まりかけた感情がまた浮いてくるのを感じた。

むしろ一度鎮まりかけたのも奇跡なくらいだ、俺は本当に本当に、もう耐えきれなかったはずで、





「何を、謝ってんの?許さないよ。話すまで」





気づいたらそんな言葉を宏光に浴びせていた。
そんなことを言ってしまえば堰を切ったように感情が高ぶって、また宏光の手を強く引いた。





*

赤い牙*52→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (198 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
803人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あこ(プロフ) - 早速赤い牙が更新されていてうれしいです!やっぱり天使なKさんがかわいくてしあわせです。しょこらさんのペースで更新されるのを楽しみにしています。 (2020年5月27日 0時) (レス) id: 2d7ec12d07 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - みちこさん» みちこ様。はじめまして!読んでいただきありがとうございます!ゆっくりにはなりますがまた更新頑張りますので、読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年5月26日 10時) (レス) id: 06e5afaa35 (このIDを非表示/違反報告)
みちこ(プロフ) - 初めまして^_^このお話好きで読んでいました。暫く更新なかったようなので更新されてとても嬉しいです^_^楽しみにしていますがしょこらさんのペースで無理なく(^^) (2020年5月26日 8時) (レス) id: c83a8a8018 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - しょこらさんはじめまして!しょこらさんの作品どれもだいすきです!特に熱中症シリーズのFKさんがラブラブで最高でした!赤い牙の続きも楽しみに待ってます! (2019年2月25日 20時) (レス) id: 2d7ec12d07 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - ともさん» まだ書いたことがないのですが、できる限り善処致します!リクエストありがとうございます!! (2018年11月21日 23時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しょこら | 作成日時:2018年11月16日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。