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ーーーたいちゃん今凄い落ち込んでて…もし北山くんに酷いこと言ったなら本心じゃないと思うんです…
ーーーたいちゃん、北山くんのこと本当に大好きなんですよ…
「……期待すんな…」
自宅のベッドの上で、誰に向けるでもなく呟く。
電気が眩しくて腕で目を覆っているからか、暗いはずの視界にはあいつの、…藤ヶ谷の姿がぼんやりと浮かんでいた。
…こっちを向いて、笑ってる。
期待って、なんだろう。
なかば無意識につぶやいていた自分の言葉を頭の中で反芻する。
心変わりをした自分を気持ち悪いと言った。
それが今のあいつの全てじゃないか。
…でも、果たして、本当に?
優しくしてくれた、藤ヶ谷。
人を傷つけることを言うなんて想像できないくらい、やわらかくて、あたたかかった人。
そんなあいつが言ってしまうくらい、俺は最低なことをしたんだって。そう思ってたけど。
マイコちゃんの言葉が頭から離れない。
藤ヶ谷は今、ひどく落ち込んでいるらしい。
…ねえ、それは、なんで。
ブー ブー
「うわっ!…びっくりした」
考え事をしていたからか、スマホのバイブレーションに必要以上に驚いてしまった。
ドキドキしたまま画面を確認し、名前を見てまたドキッとしてしまう。
「もしもし」
「あ、宏光?今電話かまへん?」
「…うん、いいよ」
「なに?なんか嬉しそうやな」
スマホに耳をあてれば、少し眠そうなやわらかいトーンの関西弁が流れてくる。
喋り方からなんだか話してる表情まで想像できてしまって、自然と頬がゆるんだ。
「声…」
「ん?」
「…聞けて嬉しい」
思ったまま言葉にする。
電話の先で大倉が息を呑んだのを感じた。
「…なんなん、急にそういう可愛いこと言うのやめてくれますかー」
「はは、ドキッとした?」
「したわアホ、次会った時覚えとけよ」
「ひー、こわいこわい」
「あ、そんで明日なんやけどな…」
そのまま大倉からの提案で、明日近くである祭りに2人で行くこととなった。
そういやたまや横尾さんも行くみたいなこと言ってたっけ。俺は大倉と行くだろうって誘われもしなかったけど。
大倉の声にひどく安心する。
さっきまで藤ヶ谷のことで1人ぐるぐると考え込んでいたのが嘘のようだ。
自分1人で考えてたって、答えの見えないことなのかもしれない。
それなら時の流れに身を任せようと、目の奥で見えた笑顔をそっと胸の中にしまいこんだ。
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せと - わたしはこの作品すきで年が変わってからも読んでいます。そして藤ヶ谷くん目線の続編を書く予定だと最後に書かれていたので、それをずっと今でも待っています。どうか作者の形この想いが伝わりますように。 (2019年5月11日 0時) (レス) id: 72bafeba6a (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - Sさん、ぴーすけさん、素敵な作品をありがとうございました。改めて始めから読み直しコメントさせていただいてます。何度みても涙して笑 作者様お二人の描く藤北が温かくて優しくてあまくかおるという題がぴったりで。毎回毎回癒されました。更新楽しみにお待ちしてます (2016年9月27日 15時) (レス) id: b659f64824 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - →ひとまずはこちらの完結、本当に素敵なお話をありがとうございました!長文失礼いたしました! (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - →ドキドキが止まらなくて、コメントする余裕がありませんでした(笑)← それくらい夢中になってはまっておりました!本当に出てきた全員が愛おしく感じるお話でした(*^^*)そして、藤ヶ谷さん視点のあまくかおる告知にすっかり舞い上がっている私ですが笑、→ (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - Sさん、ぴーすけさん、遅ればせながら完結おめでとうございました〜!もう、もうもう最後の終わり方が素敵だしにくいし大好きです(;▽;)ずっと読ませていただいてましたが、途中から更新通知きて開くのにドキドキして、読むのにドキドキして、読み終わっても→ (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:S・ぴーすけ | 作成日時:2016年7月19日 20時