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好き。
今、藤ヶ谷は確かにそう言った。
俺も良い歳だし、この「好き」の意味がどういう意味なのかくらいわかる。
わかる。けど…
「お前…、マイコちゃんいるじゃん…、」
藤ヶ谷の言う「好き」を素直に受け入れられるほど、俺は大人でもなんでもなかった。
それでも、心臓は嫌っていうくらい苦しくて、顔だって沸騰したみたいに熱い。
「マイコとは…別れたよ…」
その言葉に小さく目を見開くと藤ヶ谷が困ったように微笑んだ。
「北山のこと…好きだって気付いたから…」
嘘だ。
そんなの、絶対、嘘だ。
あんなに綺麗で、あんなに良い子なマイコちゃんじゃなくて、俺のことが好き?
そんなの、信じられるわけがない。
だけど、愛おしそうに俺のことを見つめるその瞳も、壊れもの扱うみたいに頬に優しく触れる指先も…
全部、真実なんだよって言われてるみたいで。
「今更すぎるだろ…ッ」
藤ヶ谷の表情を見ていたら、また、あの感情を思い出してしまいそうで…
怖くて、藤ヶ谷を押し退けた。
「俺はお前のこと…もう好きにならない…ッ」
「…それでもいいよ」
声を荒げた俺に藤ヶ谷は静かに呟いた。
「…北山が俺のことを見てくれなくても…俺は北山のことが好き…」
真っ直ぐ俺を見据える瞳。
「もう、友達としては見れない」
そう言い切った藤ヶ谷に小さく息を飲む。
ダメだ。
ここにいたら俺がおかしくなる。
俺は急いでその場から走り出した。
浴衣が崩れるとかそういうの全然気にしないくらい急いで来た道を戻る。
藤ヶ谷は追って来なかった。
それでも、俺は浴衣の上から胸をギュッと押さえる。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
なんで、今更「好きだ」なんて言うんだよ。
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せと - わたしはこの作品すきで年が変わってからも読んでいます。そして藤ヶ谷くん目線の続編を書く予定だと最後に書かれていたので、それをずっと今でも待っています。どうか作者の形この想いが伝わりますように。 (2019年5月11日 0時) (レス) id: 72bafeba6a (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - Sさん、ぴーすけさん、素敵な作品をありがとうございました。改めて始めから読み直しコメントさせていただいてます。何度みても涙して笑 作者様お二人の描く藤北が温かくて優しくてあまくかおるという題がぴったりで。毎回毎回癒されました。更新楽しみにお待ちしてます (2016年9月27日 15時) (レス) id: b659f64824 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - →ひとまずはこちらの完結、本当に素敵なお話をありがとうございました!長文失礼いたしました! (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - →ドキドキが止まらなくて、コメントする余裕がありませんでした(笑)← それくらい夢中になってはまっておりました!本当に出てきた全員が愛おしく感じるお話でした(*^^*)そして、藤ヶ谷さん視点のあまくかおる告知にすっかり舞い上がっている私ですが笑、→ (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
タヤ(プロフ) - Sさん、ぴーすけさん、遅ればせながら完結おめでとうございました〜!もう、もうもう最後の終わり方が素敵だしにくいし大好きです(;▽;)ずっと読ませていただいてましたが、途中から更新通知きて開くのにドキドキして、読むのにドキドキして、読み終わっても→ (2016年9月21日 22時) (レス) id: 5861ef0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:S・ぴーすけ | 作成日時:2016年7月19日 20時