３５ ページ35
.
深澤「 ……………俺は、 」
まるでこの世界には２人だけしかいないかのように閑静としていて、ふっかが唾を呑み込む音さえクリアに聞こえる。
深澤「 …俺は、 」
「 ……………ん？ 」
深澤「 …俺は、お前の事、抱きたいって思うよ 」
「 ………へ 」
深澤「 俺でめちゃくちゃになったらいいのにって思うよ 」
「 ……じゃあっ、 」
深澤「 お前はさ、抱いてほしくて着いてきたわけ？ 」
「 …いや、それは違うけど、…………でも、 」
深澤「 でも？ 」
「 ……ふっかになら、いいって思っちゃった 」
私も大人になったから、知ってるんだ。
男は、好きでもない女を平気で抱けるんでしょ？
でも、それって女としては見てるって事でしょ？
それなら好きじゃなくてもいいからさ、過ちで片付けてもいいから抱いてほしい。
まさか自分が、こんな魔性の女みたいな台詞、口にする時が来るとは思ってなかったけど。
深澤「 …俺、お前の事すっげぇ大事なわけ 」
「 …うん 」
深澤「 そんな、お前に手なんか出せねえよ 」
「 …私がいいよって言ってもダメなの？ 」
深澤「 ………っ、お前ずりぃよ 」
かすかにふっかの目が揺れた。
きっと私の顔は涙でぐちゃぐちゃで、醜いだろう。
自分でも抱いてほしくて言ってるのか、ただふっかに私の思いがわかってほしいのか、もうわからなかった。
ただ、感情に任せて口から飛び出す言葉を投げやりにぶつけていた。
なんで家に来ちゃったんだろう。
なんでふっかは家に誘ったんだろう。
どんな決断をしたところで、この恋は苦しいんだ。
「 …ごめん、変な事言い過ぎた。私、帰るね 」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未 | 作成日時：2021年1月28日 20時
