触れたい。 (ページ16)

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「お兄ちゃん、お風呂ありがとー」

渡辺「んー、アイス冷凍庫にあるよ」

「え、なんか企んでる？」

渡辺「は？お前、俺の優しさ踏みねじんなよ」

ソファに座るお兄ちゃんの横に腰をかけて、アイスを頬張る。

普段、お兄ちゃんがいて良かったなんて改めて思う事は少ないけど、今日だけは心から感謝している。

渡辺「 …は、お前」

「なに？」

渡辺「それ高えアイスじゃん、それ俺の！」

「 …はあ？そんなの知らないし！」

…結局はこうなるんだけど。

まあ、前言撤回とまではいかないかな。

私はアイスに、お兄ちゃんはテレビに夢中になっていた時、不意に電話のコール音が鳴り響いた。

渡辺「 …もしもし？俺だけど」

渡辺「んーまあ、元気にアイス食ってるわ」

鳴り響いた電話の主はお兄ちゃんで、多分だけど、かけてきたのはお母さん…だと思う。

多分、内容的に。

渡辺「 …A、代われって」

「ん。…もしもし？」

深澤「あ、もしもし、…深澤です」

「 ……ぇ？」

深澤「あれ？もしもし？」

「あ、いや、えっと電話…代わりました」

深澤「うん、体調は大丈夫？」

「あ…、元気になりました。

…その、妊娠もしてなかったです。」

深澤「 …うん、そっか。

まあ、渡辺さんが元気だったらなにより」

「 …ありがとうございます。

…迷惑かけちゃってすいませんでした」

深澤「いや、全然。じゃあ、また学校で」

…大丈夫、もう深澤先生として話せている。

そう自分に言い聞かせる。

渡辺「ふっか、何て？」

「体調大丈夫？って」

渡辺「ふーん。

ふっか、お前が妊娠してるかもしれねえって知ってたんだ？」

「ん、ちょっと口が滑った。

ていうか、誰からなのかぐらい言ってから代わってよ」

少しの沈黙の後、初めて見るような真面目な顔してお兄ちゃんは言った。

渡辺「お前、もうふっかはやめとけ」

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