触れたい。 (ページ15)

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あれから数十分経ってから、お兄ちゃんは迎えに来てくれた。

「 …ごめん、仕事だったのに」

渡辺「いいよ、有給もあったし。それより体調は？」

「 …うん、元気ではないけど、まあ」

渡辺「ふはっ、お前が元気ねぇの、なんかウケんだけど」

「なにそれ！どういう意味さ！」

いつもはウザく感じるお兄ちゃんの一言も、今日はちょっと助かった。

でも、私もお兄ちゃんも本調子ではなくて、どこかお互いを探りながら会話をしている感じだった。

…やっぱりお兄ちゃんは気付いていたんだろうな。

渡辺「 …なんか妹にこんな事聞くのどうかと思うんだけど

…生理とか来てねえの？」

「元々不順だったし、来てなくてもよくわかんないって言うか… 」

渡辺「そっか。…一応これやるよ」

そう言って袋に入った何かを、後部座席に座る私に渡した。

不思議に思いながらも受け取って中身を見てみると、中に入っていたのは妊娠検査薬だった。

「 …え、これ、お兄ちゃんが買ったの？」

渡辺「ま、まあ、あれだよ、元カノのやつ」

それが嘘だと言うことは、慌て具合からしてすぐにわかった。

妊娠検査薬を男の人が買いに行くなんて、きっと相当恥ずかしい思いしたよね…。

お兄ちゃんの優しさが身に染みた。

渡辺「お前、家帰んの？」

「 …お兄ちゃんの家、行きたい」

渡辺「 …今日だけだかんな」

また迷惑をかけようとしている私に文句ひとつ言わずに優しくしてくれるこの状況が、ある意味事の重大さを物語っているようでもあった。

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