不機嫌メルト【kne】 ページ15
［甘々］×［恋人］
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こっそりと叶くんから奪い取ったロトを抱きしめながら私は彼のベッドを占領していた。
「なんか、嫌なことあったの？」
「……なんでわかんの？」
「A、不機嫌になると僕のロトすぐ奪うもん。」
「うっ……。」
今まで無意識的にやっていたけれど、言われてみればそんな気がしてきて、反論ができない。
「え、待って、それもしかして僕のせいだったりする？僕なんかしちゃった？マジで無理ホントに無理、Aに嫌われたら死ぬんだけど！？」
「あー……。」
「なんか言ってよぉ！！」
「ご め ん て 。……叶くんは悪くないよ。」
「それなら、よかったぁ……。」
ナチュラルにヘラった叶くんの音圧が耳に高いダメージを与えたような気がする。まぁ良いか。ホッと一安心してる彼を見て話を続けた。
「ただ、私が私に嫌気が差してただけだよ。最近、叶くんに頼りすぎてる節があるなーって思って…。」
「……僕もっとAに頼られたいんだけど。」
「優しいかよぉ……。」
「ほら、おいで？」
叶くんが腕を広げて、優しく笑う。なんだか少し恥ずかしくて、躊躇いがちにそっと抱きついた。背中に腕を回され、抱きしめられる。鼻いっぱいにバニラの甘い匂いが広がる。
子供をあやすように、よしよしと頭を撫でられて、私はもう一杯一杯だった。鼻の奥がツンとして視界が霞む。
これ以上はダメだ、と私のちっぽけなプライドが制止する。これ以上優しくされてしまうと彼の優しさに、私はとことん甘えてしまうから。
「叶くん。もう、大丈夫だよ。」
やんわりと彼の体を押して離れようとした。すると、さらに強く抱きしめられて逃げられなくなる。
「わっ、ぷ！」
「僕嘘つく子きらーい。」
「別に、嘘なんてついて、」
「あー、また嘘ついたー。そんな、今にも泣きそうな顔して説得力皆無じゃん。」
そんなことない。
なんて言葉は声に出す前に消えてなくなった。必死にせき止めていた涙が溢れて止まない。私の涙が彼のパジャマを濡らしていく。
とくん、とくん、と脈打つ彼の心臓の音が心地良くて安心する。
「……叶くん。」
「なに？」
「大好き。」
「ふふ、急に甘えたじゃーん。」
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作者名：麻種るの | 作成日時：2021年8月6日 0時
