好きって言って、意識して【ryshn】 ページ2
［全力ブーメラン］×［クラスメイト］
･──────────────･
「僕のこと、好き？」
そう言ったのは、隣の席に座る緑仙くんだった。
放課後、窓から差し込む夕焼け色のライトが私達を照らす。
教室に二人きり。仏頂面の平凡人間と学園の王子様という奇怪な組み合わせ。
よくわからない状況に加えて、あまりにも唐突な質問に、驚きを通り越して頭が回らない。
彼(彼女？)と目が合えば、まるでいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「えっと……なんで……？」
「Aから好きって言われたくて。」
……訳がわからない。
軽いジョークなのか、
緑仙くんは変わらず机に頬杖をつきながら私をジッと見つめてくる。
なんだか、むず痒く感じて視線を横にそらせば「あ、そらすな！ズルいぞ。」と怒られた。
視線を再び緑仙くんに向ける。
彼はぷくー、と頬を膨らましていかにも拗ねてますといった顔で睨んでいた。
「……まぁ、好きだけど。」
努めて冷静に言ったつもりだ。
なんだか変に意識してしまったせいで、思っていたよりもぶっきらぼうになってしまった気はするけれども。
ああ、困った。深い意味なんて無いのに恥ずかしくてしょうがない。これじゃあまるで、私が緑仙のことを本気で好きみたいじゃないか。
嫌でも顔に熱が集中するのがわかる。
いてもたってもいられなくて自分の顔を隠すようにして顔を伏せた。
きっと今、私は、顔が真っ赤なはずだ。
──── 好きだよ。
「…………は？」
伏せていた顔を上げると、緑仙くんは勢いよく顔を背けた。
「ぼ、僕、もう帰るねっ、また明日ッ！」
そう言うといきなり立ち上がり、パタパタと教室を出ていく。私は一人、ぽつんと教室に残された。
本当に、緑仙くんは訳がわからない。
あんなにもチヤホヤされているのに、私のようなつまらない人間とも仲良くしてくれる。
優しくて、可愛くて、格好良くて、……
……そんなの、意識しない方が難しいじゃんか。
緑仙くんの表情はわからなかった、けど ──
「……耳が、赤かったな。」
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作者名：麻種るの | 作成日時：2021年8月6日 0時
