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私はぎゅっと唇を噛みしめた。
あ「それでも、勝利を許すことなんか出来ない」
叶うならば、今すぐ 地 下 牢 に飛んで行って、由利に会いたいし。
大学で勝利を見かけたならば、勝利をぶっ飛ばしてやりたい。
だけど、特に前者の願いは無理だ。叶うわけない。
そんなこと、さすがの私でも分かっている。
健「あぁ、許す必要なんかないよ。前にもお前に言ったよな？アイツに深入りするな、アイツはマリさんの都合のいい駒だ」
あ「うん、覚えてる」
健「だから、別に同情する必要もない。どんな事情があれ……それが例え実の姉だとかいうアカリを追うためだとしても、だ。アイツはアイツの信念で周りを陥れているだけ」
私は目を閉じた。
健「そして、それは風磨だって同じ」
はっと目を開ける。
健人はため息を吐くと、テーブルの上に置いてあったコップを持ち上げた。
からん、と氷が音を鳴らして、ちゃぷん、と揺れるお茶をその真っ黒な瞳が見つめている。
健「俺はずっとお前に、風磨のことだけを考えていればいい、余計なことは考えるな、って言い続けてきたよな」
あ「そうだったね」
健「別にその気持ちに偽りはないし、今でもそれは変わらない」
からん、からん。
お茶が減るにつれて、氷の音が微妙に変わる。
光の失せた瞳は、まるで氷のように空虚だ。
健「アイツは……闇が深い。必死に抗っているけど、結局はアイツだってマリさんの駒。でも別に同情するつもりはない。アイツは残酷だ」
あ「うん」
健「(人1)を守るためなら手段を選ばない。その程度の残酷さなら可愛いものだ」
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作者名：北斗七星 | 作成日時：2017年3月23日 15時
