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風磨side
風「全然散らかってないな」
ぽつりと声を漏らす。
淡いグリーンで統一された部屋は、清潔感がある。
その洗練された統一感は、逆に言えば生活感があまりなくて。
あ「神崎さんは、もう自分が戻って来れないと分かっていたから、部屋を綺麗にして行ってしまったのかな」
悲しそうな(人1)の声に、ただ頷いた。
きっとそうなんだろう。
あまりにも物が少ない気がした。
あ「あっ……」
(人1)が俺の手をほどいて、棚に近寄っていく。
そこにはいくつかの写真が息をひそめるように立てかけてあった。少し埃が被っている。
まだ子どもの俺と、この家に来たばっかりの(人1)が手を繋いで並んでいる写真。
中学の制服に身を包んだ幸せそうな(人1)と、高校の制服を適当に着てつまらなそうな顔をする自分。
小さな男の赤ちゃんを……俺を、抱えて。悪戯っぽく笑う聡さん。そして、聡さんの腕で眠る俺を優しく覗き込む美咲さん。
産まれたばかりの(人1)を抱いている美咲さんと、幸せそうな聡さん。そして、小さな俺。照れくさそうにはにかんでいる。
制服を着た4人組。鋭い眼光でこちらを見る神崎さん、にやりと口角を上げる聡さん、花開くように笑う美咲さん…………淡く微笑むマリさん。
みんな幸せそうだった。
俺は黙って写真を眺める(人1)を見ていた。(人1)は今にも泣きそうだった。
その気持ちが分かる気がした。
あ「私、手を洗ってくるね」
ぱたぱたと慌ただしく(人1)が出て行く。どうせ1人で泣くんだろう。俺はため息を吐いて、(人1)のいた棚に近寄った。
写真立てをそっと持ち上げる。
ふっと舞い上がった埃が、日の光できらきらと輝いている。
ぱさり、と音を立てて。
写真立ての裏に隠されていた何かが落ちる。
風「手紙……？」
真っ白い便箋。
筆圧の濃い、しっかりとした文字。
俺はその中身を見て……
風「あぁ。………そういうこと、か」
震える瞼を閉じた。
＊
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作者名：北斗七星 | 作成日時：2017年3月23日 15時
