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マリさんに首を 絞 め ら れ た 日のことがフラッシュバックする。気を抜いてはいけない……と、自分を奮い立たせる。
『憎たらしいぐらいに似ている』
『美咲の生き写しだ』
あの日の言葉を思い出しながら。
唇を固く結ぶ私に、マリさんは視線を流しながら、テーブルに置かれていたミルクティーに手を伸ばした。
たった1つの仕草なのに、猛烈な フ ェ ロ モ ン を漂わせて。
風磨の父親なんだよね？
見えない……若すぎる。
マ「姫は仕事が出来るらしい」
あ「え？」
マ「態度は褒められたものじゃないけど、その仕事っぷりは称賛に値すると、前の部署でも今の部署でも持ちきりだよ」
色素の薄い瞳が色気を醸し出しながらも、私を見定めようとする。
この人は、壊れているんだ。
マ「才能があるらしいね」
デザインの才能。商品としてのデザイン、空間としてのデザイン、それらを総合的にまとめ合せるコーディネート。
私は微かに首を横に振った。
恐怖のせいか、膝に置かれた掌が震えていることに気付いた。
あ「……別に。好きでやってるわけじゃありませんから」
仕事だからやっているだけだ。
あ「それを評価していただけたことは有り難いと思いますけど…」
マ「じゃあ、何が好きなの？」
可笑しそうに肩を揺らしながら、幼子を見守る親のような目で、マリさんが見つめてくる。
これは罠……これは、仮面だ。剥ぎ取れば、その下には、冷酷な 殺 人 鬼 と化した壊れた男が現れるはずだから。
あ「好きなことは、」
閉じた瞼の裏に、大切な人の姿が浮かぶ。
あ「特にありません」
守りたい人たちがいる。
その人たちと幸せに生きていけるのなら、そのための方法や仕事があるのなら、それが私にとっての「好きなこと」になる。
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作者名：北斗七星 | 作成日時：2017年3月23日 15時
