相澤先生の寝袋 [ヒロアカ] (ページ38)

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相澤先生の寝袋体育祭ページ38

Aは控え室の奥の保健室の外の椅子に独り腰を掛けていた。

なぜか。

第1ラウンドの1回戦を個性使用なしで勝利したAは、切島が心配でたまらないのだった。

Aは最後まで切島の攻撃を避け続け、攻撃のパターンがこれ以上ないというところまで切島に一切の怪我を負わせなかった。

最後の最後で場外に出そうか戦闘不能にしようか迷いに迷った末に、Aは切島を戦闘不能にすることを選んだのだ。

つまり、一時的に意識不明にするという方法だ。

後頭部の第1・2頸椎の間ピンポイントに背後から手刀を入れるというものだが、これが失敗すると最悪の場合麻痺が残ることもある高度な技なのだ。

わざわざそのリスクを犯してまでAがこのような戦法を選んだのは、切島との戦いはド直球で捻りが無かったが切島の色々な思いが伝わってきて面白い戦いであったからだ。

最後は自分が終止符を打ってこそ、切島の誠意に答えられるとAは思ったのだ。

ガラ…

保健室の扉が開いた。

『！切島っ！』

切「…A先生、おれ」

『麻痺は？怪我は？どこか痛いところはないっ！？』

Aは保健室から出て来た体操服姿の切島の肩を両手でガッシリと掴み、矢継ぎ早に質問しては身体の様子を瞬時に観察した。

見たところ、気になる点は浮かない顔をしているくらいであった。

切「うおっ！？そんなに心配しなくても大丈夫っスｗ」

それもAの必死な心配によってかき消されたようである。

『よかった…』ﾎｯ

切「あの…俺、全然手も足も出なかったっス！
最初あんな宣言しておいてスゲェかっこ悪いんですけど、A先生が女の子になって、どこかで戦いでは勝てるんじゃねぇかって思ってました
ほんと、失礼なことしてスミマセンｯ！！！」

切島は、安心して顔も膝もフニャフニャしているAに勢いよく深く頭を下げた。

切島の肩は少し震えていて、Aは笑いながら切島の髪を優しく撫でた。

『うん、伝わったよ』

切「っ…」

『君の技を受け流す度に君のいろんな思いが伝わってきて、俺は嬉しかった
俺が個性を使うか使わないかなんて、そんなことは正直あまり重要じゃないんだ
ヴィランとの戦いでも仲間同士の喧嘩でも、本当に大切なことはどれだけ自分の思いを相手に伝えられるかだ
切島、顔を上げて俺の目をしっかり見てみろ』

切「！」

『俺は、切島に倒されるヴィランは幸せだなと本気で思ったよ』

Aは全てを包み込むような顔をして微笑んでいた。