相澤先生の寝袋 [ヒロアカ] (ページ11)

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相澤先生の寝袋任務ページ11

相澤消太という男は、実に難儀な性格をしている。

電車に揺られるAは過ぎゆく景色を横目にそんなことを思っていた。

ヒーローとしても、教師としても、一人の人としても

相澤消太は不器用過ぎると、最近になって再会を果たした先輩をそのように位置づけていた。

もっとも、学生時代にお世話になった先輩の前ではフルネーム呼び捨てなどとんでもないと思ってはいるものの

いつかは本人の前で呼んでみたいと密かに思っているAなのである。

そして、そう呼べる時はできれば自分の腕の中で眠る先輩の寝顔を見れる時であってほしい

何気ない顔で空き座席を陣取るAは思っている。

つまる話、Aは相澤消太を性別関係なく人として大好きなのである。

今日、付喪Aは政府から内密に遂行するように依頼された任務に出向いていた。

目的の場所はとある研究所。

違法人体実験を繰り返す科学者集団の持つデータを全て奪って、依頼元に届けるお仕事。

その依頼元とは、犯罪者集団の拘束を表向きの動機に掲げて実はその手のデータがほしいだけの政府だ。

Aはもっぱらこういう正義と悪の間のグレーゾーンを彷徨うような任務を引き受けては、今回も特におもしろそうなことはおこらなかったなと溜め息を付いて帰ることが多い。

今回もこんなかんじだろう、と高をくくっていた。

『…ふあぁ…』

欠伸混じりに駅を降りて、目的の研究所に入ると早速個性を発動させた。

窓『…(先輩、朝ご飯食べたかな…)』

研究所の廊下の1枚の窓ガラスに化けたAは、暢気に今朝の相澤の眠そうな顔を思い出していた。

ちなみに、今朝の朝ご飯は豆腐の味噌汁と卵焼きと白米だった。

窓『…(ちゃんとお弁当も作って置いておいたんだけど、忘れずに持っていったかな…)』

台所はもちろん、家事は全てAに任されている。

よって、このような主夫感漂うあれこれを思ってしまうのだ。

先程から何人も真面目そうな白衣の人たちが廊下を行き来するが、これといって得られる情報がない。

Aは壁のシミや電球に化けながら廊下を進み、研究データ保管庫のような部屋に辿り着いた。

部屋の窓から休憩所が見える。

椅子『…(お、ビンゴ！ではでは、いただきますよ～)』

何台もあるPCの内の1台を立ち上げると、まとめてあるデータの数々にキーが掛かっていた。

ハッキングするためにPCを弄くり回していると、休憩室のテレビのニュースが聞こえてきた。

報道「緊急速報です__」