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ゴンゴン、と雨の雑音に負けぬように強く戸が叩かれたことに気づき「どうぞ」と反応するが、オーヴェンは正直内心ではとても驚いていた。
こんな雨の日にくるほどの怪我が起きるような他国との小競り合いは起こっていなかったし、なによりも来客のもつマナが明らかに魔法帝ユリウスのものだったからだ。
ガチャリと中に入ってきたユリウスは少女を抱えていた。
「…ユリウス、いくら君でも誘拐はちょっと。」
「いや、違うからね?」
若干引き気味に言うオーヴェンの言葉を訂正してからユリウスは事情を話し始めた。
ー
「なるほど、じゃあ早速だけど治してしまおう。水回復魔法クヴァレオペラツィオン」
オーヴェンが魔法を発動させると水でできたクラゲがふわふわと漂い始める。
Aの体をすっかりと包み込むと血が滲んでいた肩のあたりや身体中のあちこちががポワポワと淡い光を発し初めて黒々しい色になっていた傷口がゆっくりと塞がっていく。するとあることに気がついたのかオーヴェンが眉を顰める。
「ユリウス、この子の傷口に毒が入っている。それもとても強力な。それに、身体中のあちこちに石があたったような跡がある。」
治療が終わったのか魔法の展開をやめると魘されているAをベッドの上に寝かせてから、ユリウスを椅子に座らせて向かい側にオーヴェンは座った。
「この子の体内に入っている毒は命に関わるものではないが体を一時的に麻痺させて動きを封じるものだ、それもおそらく何者かの魔法によるもの。…まあ、キミの話を聞く限りその洞窟前にいた貴族だろうけどね。あとは風邪をひいているね、雨に当たって冷えたのもあるだろうけど疲労やストレスも原因だろう。決定打は毒での免疫力の低下だね」
診断結果を淡々と言うオーヴェンはなにか気になっているのかAとユリウスを交互に見ながらカルテを書き始める。
「ユリウス、キミはまた日ノ国の子を拾ってきたのかい?」
そんなセリフを言われてしまうと苦笑いするしかない。
言い訳のように聞こえてしまうが、ユリウスは別に異邦人や下民が特別好きと言うわけではなく、魔法が面白かったりほっとけないような者だったら面倒を見てしまうと言うだけだ。
「あはは、手厳しいねオーヴェン。Aは多分ヤミの妹なんだ、ヤミは故郷に妹がいるって言ったしね」
そうなんだねと言ったきりオーヴェンは薬棚から何か取り出しているようで喋らなくなってしまった。
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二度寝(プロフ) - 単行本でこの夢小説に影響するちょっとした出来事が起きたので牛歩どころか粘菌レベルの歩みの投稿ペースがさらに落ちますが、一応書いてます。 年単位振りの再会でストーリーの展開が分からなくなってきていますが、過去の私のメモのおかげでなんとか生きてます。 (7月24日 17時) (レス) id: 2efcf48650 (このIDを非表示/違反報告)
二度寝(プロフ) - お久しぶりです、作者の二度寝です。 久方ぶりの投稿がこんな内容になってしまうのは大変心苦しいのですが、少し考えていたストーリーを改変する必要が出てきたことをお知らせします。 (7月24日 17時) (レス) id: 2efcf48650 (このIDを非表示/違反報告)
^ナキア^ - 最高に面白かったです!もう神すぎてやばい_:(´ཀ`」 ∠): (2022年4月17日 18時) (レス) @page32 id: d9381db58d (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 一気読みしました!面白いですね‼︎頑張ってください‼︎٩( 'ω' )و (2022年4月4日 14時) (レス) @page32 id: 553232132b (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - お久しぶりです。久しぶりの更新お疲れ様です。気長に更新待ってますね頑張ってください! (2022年1月18日 20時) (レス) @page32 id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:二度寝 | 作成日時:2020年8月11日 0時